NHK『光る君へ』第32回
続きも読んだ上で、まひろに会いたい、と言い出す。続きが読みたいと言われるのは間違いなく、作者にとっては嬉しいことだ。が、おそらく、まひろ以上に喜んだのは道長だろう。

◆愛を深める道長の表情に注目

NHK『光る君へ』第32回
道長は彰子(見上愛)の女房にならないか、とまひろに持ち掛ける。藤壺で続きを書かないか、と。まひろが藤壺にいれば、まひろに興味を持った一条天皇が訪れるきっかけになるかもしれない、と考えたのだ。

まひろとしても、自分が藤壺で働けば、一家の家計を支えられる。為時(岸谷五朗)もこれを名誉なことだと考え、賛成した。

NHK『光る君へ』第32回
と、ここで気になるのが倫子(黒木華)である。倫子は道長の心の中に別の女性がいると気がついている。その相手がまひろだと気づかれやしないだろうか。

倫子が道長に、どうしてまひろのことを知っているのか、と問うたのはヒヤリとした。しかし、道長は「公任に聞いた」とさらり。まひろがいることで帝が藤壺に通うようになるかもしれない、と聞き、倫子も嬉しそうに賛成をする。さらに倫子がそう言うのなら、とした上でまひろを女房にするあたり、きっと倫子の問いを想定していたのだろう。あまりにも流暢すぎて、疑われやしないかと思うけれど、嘘はついていないのだから、問題はない。いつからまひろのことを知っていたのか、と聞かれたらどうするつもりだったのかが気になるけれど。

道長のまひろに対する思いはと言うと、ますます大きくなっているように感じる。もはや気軽にまひろのもとを訪れるようになっていて大丈夫? となる。同じ目線で話をし、まひろ書いているそばでのんびりと物語を読む。

そして「俺が惚れた女はこういう女だったのか……」と考える。惚れ直している場合か……という気もするけど、この瞬間が幸せなんだろう。

相思相愛でも夫婦になれないふたりのこの距離感、まひろを見つめる道長の表情が良すぎて……むしろこの関係が正解だったのでは、と思わずにはいられない。