しかし、詮子が息子を大切に思っていることには変わりはない。「四十の賀」で倒れた詮子。一条天皇が駆け寄ろうとするが、触れてはならない、と一喝。穢れに触れてはならない。あなたは帝なのだから、と。穢れるから亡くなった者に触れてはならない、というのは、一条天皇をより孤独にさせているようにも思うけれど、母としても辛いことに違いない。
そんな詮子のそばにずっと寄り添っていたのは道長だった。互いにとって、かけがえのない存在で、ふと気を緩ませることができる間柄。詮子が亡くなったことによって、道長もまた、拠り所を亡くした。
◆道長のふたりの妻の戦い
「四十の賀」では倫子(黒木華)と明子(瀧内公美)の対立も。倫子の息子・田鶴と、明子の子・巌が一条天皇の前で舞を披露したのだ。もちろん、倫子と明子もいる。これには公任(町田啓太)も「妻をふたり同席させるのはよくないなぁ」。公任、昔は女性の心を慮る様子なんて全くなかったのに、大人になられたのですね、と余計なところで少し感じ入ってしまう。
舞を見た一条天皇は、明子の子・巌の舞の師に従五位下の位を授ける。これに田鶴が泣きだしてしまうが、道長はめでたい席では泣いてはならないとぴしゃり。倫子の険しい表情が恐ろしい。
母として、妻として、の戦いが展開されているわけだが、結果、道長の居心地の良い場所がなくなってしまうことになる。道長はもう少しその辺りを気遣っても良さそうな……。
道長の心の中に倫子も明子もいないから、こういうことになってしまうのだろうか。
◆定子が亡くなりききょうは……愛する定子がこの世を去り、ききょう(ファーストサマーウイカ)は『枕草子』の執筆に集中していた。
それを携えてまひろのもとを訪れる。ふたりのシーンを久しぶりに見た気がする。
まひろのアドバイスから『枕草子』を書き始めたのだから、まひろにも見てほしい、ということだった。