◆妻は“即賛成”とはならなかった
こみあげさん夫婦は当時、東京在住歴20年。原宿で技術を磨き、フリーランス美容師として活躍しながら、店舗出店を検討していたといいます。やっと自分の“家”を持とうとするタイミングで浮かんできた車中泊生活ですが、奥さんのリアクションはどうだったのでしょう。
「妻としては、当時の相談は半分冗談だと思っていたみたいです。自分たちでお店を出そうという話もありましたし、大きく生活が変わるから、即賛成とはもちろんなりませんでした。ただ、妻も子どもが生まれる前に中南米横断の旅を僕と経験しており、旅をすると大きな成果が得られることは実感していました。それが経験としてあったので、懐疑的ではありましたが『夫が言うなら、意味があるのかもしれない』とは感じたようです。
そこから彼女は、キャンピングカー生活や旅をしながら子育てすることについて調べたようです。日本では車中泊で子育てをすると聞くと、すごく突飛なように感じられるかもしれません。でも海外では、ヒッピー文化の流れの中で、わりと受け入れられていたりもします。こうした海外情報を妻は自ら調べ、車中泊子育てによって得られるモノもなんとなくイメージがつき、最終的には同意してくれました」
◆仕事を手放し、長期の旅に出るためにやったこと
妻という協力者を得ながら、こみあげさんも着々と準備を進めていったと思いますが、美容師という仕事は現場ありきの働き方です。仕事はどのように整理したのでしょうか。
「妻と話をしてから出発までは、1年くらいかけて準備を行いました。具体的には、訪問美容室を立ち上げたり、ブログやYouTubeチャンネルなどの発信を始めたりしました。旅の最中はノマドビジネスができるよう、なんとか場所と時間に依存しない仕組みを作っていましたね。
とはいえ、美容法は規制も厳しく、訪問美容室は、妊婦さんや育児中のお母さんなど、来店が困難な方へのサービスとしてしか行ってはいけないと法律で決まっています。訪問美容室はやりつつも、メインはYouTubeチャンネルの運営で、過去の中南米の旅の模様や、キャンピングカー生活の準備動画をあげていました」