©2024 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.©2024 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.

2024年公開となる映画の中でトップクラスに奇抜なひとつが、9月27日(金)日本公開の『憐れみの3章』だ。ヨルゴス・ランティモス監督(『ロブスター』)の最新作である今作は、彼のもとに集結したエマ・ストーンジェシー・プレモンスウィレム・デフォーら豪華出演陣が、3つの物語でそれぞれ異なる役を演じ分けるという衝撃作である。

『憐れみの3章』予告編

『憐れみの3章』あらすじ

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自分の人生を取り戻そうと格闘する、選択肢を奪われた男、海難事故で失踪した妻が、帰還後別人になっていた夫、卓越した宗教指導者になるべく運命付けられた特別な人物を懸命に探す女…という3つの奇想天外な物語。

レビュー本文

多種多様な“人間のあり方”の観察

『憐れみの3章』の原題は『Kinds of Kindness』。“優しさの(複数の)形”、“親切心の多様な表れ方”といったようなニュアンスに感じる今作は、間違いなく“多様な人間性”を描きあげる1作だ。

第1章では「会社の上司に選択肢を奪われ、人生を取り戻そうとあがく男性」をとおして“支配と欲望”を、第2章では「失踪した後に戻ってきた妻が別人のような挙動を見せて困惑する男性」をとおして“愛と服従”を、第3章では「崇拝の対象として予言された人物を探し求めて奔走する女性」をとおして“信仰と盲信”を描く今作。
各章の内容はそれぞれかなりクレイジーで衝撃的であり、中でもひとつはかなり“ぶっ飛んだ”ものとなっているが、そこに浮かび上がる人間模様や、人々が見せる挙動・心の動きは強い現実味を帯びており、ただの混沌としたおとぎ話として片づけられるような作品ではない。

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まさかの展開に息を呑んだり、衝撃的な挙動に言葉を失ったり、予測不能でブラックなハプニングに吹き出したりしながらも、そこには我々の日常のすぐそばにありそうな、さまざまな人々の個性が丁寧につむがれており、まさに多種多様な“人間のあり方”を観察しながら作り上げた、“人間図鑑”といえるような映画として仕上がっている。人生に手本などなく、どんな人間にもそれぞれの正しさや行動理念があり、それぞれの人生が滑稽で衝撃的な物語となり得ることを、『憐れみの3章』は再確認させてくれた。