その刺激をメンバーの中心で体現する今井は、当時まだ小学3年生だった。子役とは、総じてませた存在感の持ち主だが、今井の場合は変に装飾されていない人懐っこさが朗らかでもあった。
◆須賀健太とのツートップ子役時代
「こりこりまりもっこり」がヒットする前からすでに注目されていた。リリースの前の年、2007年5月に公開された『パッチギ!LOVE&PEACE』では、骨太な井筒和幸監督作品の世界に大人俳優顔負けですっぽりはまりこんでいた。
同年8月に放送された『はだしのゲン』(フジテレビ)に弟役で出演したことで、「あのときの子役!」と広く人々が記憶するきっかけになったかもしれない。公開年が近い映画作品だと『ALWAYS 三丁目の夕日』(2005年)がある。同作の須賀健太も一時代を象徴する子役だった。
2000年代中頃から後半にかけては、須賀健太と今井悠貴のツートップ子役時代と区分してもいいかもしれない。時代が少し下って2011年公開の『白夜行』では、高良健吾の子ども時代を演じ、船越英一郎もどきりとした様子の寒ざむしい表情を暗がりに浮かべていた。陽も陰も使い分ける。息の長い芸達者ぶりである。
◆猪爪家が輩出する初めてのミュージシャン
同時代で見てきた視聴者にとっては、『虎に翼』の直治役での登場はそれなりに胸が熱くなったのではないだろうか。なにせ初登場からかなりインパクトがある。
高校3年生になった直治はサックスにのめり込んでいる。いつでもどこでも吹いて、誰かに聴かせたくてうずうずしている。寅子と優未の帰還を祝う夕食では、一興としてさっそく披露する。甥っ子の演奏を聴く寅子もにっこにこでうきうき。
猪爪家が輩出する初めてのミュージシャンでもある。有名なプレイヤーになるんだと夢であふれる。いいぞいいぞ。目指せジャズメン。寅子に応援された直治が「俺にはわかってたよ」とへらへらするのは、戦死した父・猪爪直道(上川周作)ゆずりの茶目っ気だろう。確かにあの父からジャズメンが生まれるのはうなづける。