リアルを追求したCGによる“映像体験”

なんといっても今作の魅力はそのあまりにリアルな映像。今作にはこれまでのシリーズと異なり実写の人間が登場せず、完全にCGのキャラクターたちがCGの世界で冒険し、CGの世界で戦う映画だ。

にもかかわらず、今作はいつものシリーズの延長線上にあるとたしかに感じさせられた。現実には存在し得ない世界が描かれるものの、その質感や陰影はあまりにリアルで、“本当にどこかに存在するサイバトロン星”で撮影した映画かのようにすら見えてくる。

近年は『スパイダーマン:スパイダーバース』シリーズや『ミュータント・タートルズ:ミュータント・パニック!』、日本では『プロメア』など、アニメーションによる表現を極限まで突き詰めた結果生まれる独自の世界観を魅力とする映画が多くトレンドになっていたように思うが、今作の改めて真っ向からリアルを追求した映像は、見事な直球でサイバトロン星での“映像体験”を我々に与えてくれた。

Ⓒ2024 PARAMOUNT ANIMATION. A DIVISION OF PARAMOUNT PICTURES HASBRO. TRANSFORMERS AND ALL RELATED CHARACTERS ARE TRADEMARKS OF HASBRO. Ⓒ2024 HASBRO

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豪華キャスト陣の安定した声の演技

声優陣も非常に心強い。オライオン・パックス役にはクリス・ヘムズワース(『マイティ・ソー』シリーズ)、D-16役にはブライアン・タイリー・ヘンリー(『エターナルズ』)、スカーレット・ヨハンソン(『ブラック・ウィドウ』)、バンブルビー役にはキーガン=マイケル・キー(『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』)、ほかにもジョン・ハムローレンス・フィッシュバーンスティーヴ・ブシェミと、豪華ハリウッドスターが集結した。

クリス・ヘムズワースは『マイティ・ソー』を思わせる茶目っ気にあふれる豪快な正義漢であるオライオン・パックスに適任。ブライアン・タイリー・ヘンリーはで助演男優賞にノミネートされたA24映画『その道の向こうに』でも、献身的に他人を包み込む優しさを見せており、パックスに呆れながらも支える、包容力のある親友D-16役が非常にしっくり来ていた。

スカーレット・ヨハンソンが声だけで観客を惹きつけられるのは『her』や『SING/シリーズ』でも実証済。今回のエリータ役にも、明らかに彼女の力強い魂が宿っていた。そして『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』のキノピオ役でコミカルな声の演技をこなしたキーガン=マイケル・キーは今回も非常に軽やかに、おしゃべりで愉快なバンブルビー(B-127)役を演じきった。

善の心で立ち上がり、悪を討ち滅ぼさんとする王道なバトルアクション映画であるのみならず、極めてハイクオリティな映像に彩られた非常にドラマチックで理想的な前日譚として完成された最新作『トランスフォーマー/ONE』は9月20日(金)公開。