しかし、天城は東城大を去り、帰らぬ人となってしまった。冠動脈疾患の影響によるものなのか、父と佐伯の遺恨が清算されて燃え尽きてしまったのか、原因は定かではないが、天城は幻のように人知れず消えてしまったのだ。弟子のように厳しく指導していた世良(竹内涼真)に宛てた手紙からは、温かみに満ちた人間性が伝わってきた。天城は病や悪にとっては“悪魔”であり、その素顔は“正義の医師”だった。

 ただ、エンディングは次回作『ブラックペアン シーズン3(仮)』への期待が高まるものだった。天城が植樹した桜の木が美しい花を咲かせる「スリジエハートセンター」を訪れたのは渡海とその愛弟子・猫田(趣里)。渡海が新病院にやってきたのは天城への追悼かと思いきや、渡海は猫田から手渡されたドクターコートに腕を通す。ドクターコートの腕部には、なんと東城大のロゴが入っていた。渡海は東城大に戻ってきたということだろう。エンディング時点で「スリジエハートセンター」のセンター長の椅子に座るのは高階(小泉孝太郎)だけに、次回作があるとすれば渡海の破天荒な振る舞いに、高階が困惑する姿が目に浮かぶ。

 さらに、天城の意志を受け継いで「スリジエハートセンター」に赴任した世良は、海の見えるオペ室でクラシック音楽を流しながら華麗な手さばきで手術を行い、手術を終えた患者の心臓に優しく手を添えるなど、まるで天城の生き写しのようだった。天城が思い描いた通りの新病院に渡海と世良の二枚看板がいればどんな難手術でも軽々対応してしまいそうだが、『シーズン3』があるとすれば“天才医師vs進化した医療AIロボット”など相当な難問が用意されることだろう。

 主人公が悲運の死を遂げるかたちとなった『ブラックペアン シーズン2』。悲しいながらも次回作への希望を抱かせる結末になったのは視聴者ファンにとって救いだ。次回作があるとすれば、主演・二宮和也の演技は一流から円熟の域にレベルアップしていることだろう。渡海がどのような姿で、どのような難手術に挑むのか……。『シーズン3』制作決定の吉報を楽しみに待ちたい。