2年続いたのは一時的な浮気ではないと三田さんも判断したのだろう。夫の実家に乗り込んで外まで聞こえるような怒声を浴びせたなどという報道もあった。息子が父親に「いいかげんにしてください」と諭(さと)したとも言われている。

だが、何十年連れ添った妻であっても、夫の行動を支配することはできない。「4人の歌舞伎役者を支える要」である三田さんが、どれほど模範的な父、規範となる役者像を望んだところで、芝翫には芝翫の思いがあるのだろう。彼は三田さんの気持ちに反して、外に逃げ道を求めたのかもしれない。

◆自ら離婚という選択をするとは思えない理由

33年前、ふたりは確かに理想のカップルに見えた。三田さんは最初から覚悟の上で、歌舞伎役者の一門に入った。変わらずに自分の立場でがんばり続ける妻を見ながら、夫は何を感じていたのだろう。

三田さんはすでに我慢の限界と言われてもいるが、それでも一般家庭の妻と違って自ら離婚という選択をするとは思えない。なぜなら、彼女は一家の要だから。

要が降りたら、すべてがバラバラになってしまう。それは彼女がもっとも嫌うことではないだろうか。義両親への裏切りととらえるのではないか。

そのうち孫ができるかもしれない。夫がふらりと家に戻ってくる可能性もなくはない。そう考えながら、まだまだ明るくふるまいながら、陰で耐えるように思う。

ただ、彼女には強力な味方がいる。息子たちである。

実は立場が危ういのは、三田さんではなく夫の芝翫なのかもしれない。

<文/亀山早苗>

【亀山早苗】

フリーライター。著書に『くまモン力ー人を惹きつける愛と魅力の秘密』がある。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。Twitter:@viofatalevio