『ヒットマン』© 2023 ALL THE HITS, LLC ALL RIGHTS RESERVED『ヒットマン』© 2023 ALL THE HITS, LLC ALL RIGHTS RESERVED

今最も勢いのある俳優のひとりであろうグレン・パウエルが、またも新たな顔を(いくつも!)見せてくれる映画が登場した。9月13日(金)公開となった『ヒットマン』だ。

『ヒットマン』あらすじ

信じ難い実話に着想を得たストーリー。真面目で堅物な大学教授が、偽のヒットマンにし、自分の隠れた才能を発見していく。

彼がとある1人の顧客に心を奪われてしまったことで、欺瞞と歓喜に火がつき、彼のアイデンティティは複雑になっていく…。

レビュー本文

“演じる人”を演じるグレン・パウエル

今作ではグレン・パウエルが姿をコロコロ変えながら、おとり捜査を続ける。

『トップガン マーヴェリック』『恋するプリテンダー』『ツイスターズ』など、アクションからロマンスまで幅広い大衆映画で活躍を連ね、今最注目の俳優のひとりといえるパウエルが、今回は1つの役の中で“さまざまな役”を演じている。

『ヒットマン』© 2023 ALL THE HITS, LLC ALL RIGHTS RESERVED

衣装や髪型が変化するファッションショー的な楽しみ方ができることはもちろん、うだつの上がらない教師が、自分の演じるセクシーなヒットマンに触発されて色気を増していく展開など、演技力とビジュアル、存在感のすべてが揃わなければ成立しない物語をパウエルは完璧にこなしている。

“自分自身ってなんだっけ”

しかし、“自分の演じるほかの自分”に触発されて変化した自分は本当に“自分”だろうか。今作はさまざまな役を演じる主人公ゲイリーをとおして、アイデンティティ・クライシスをわかりやすく描いている。

怒りっぽくても寛大な人を演じたり、頭の中はクレイジーな妄想だらけでも常識人を演じたり、面白くなくても“ウケている”ように演じたり…おとり捜査などしていない我々でも、日々“演じる”ことはあるだろう。中には完全に自分に正直に生きているという強者もいるかもしれないが、逆に“基本的に別人を演じ続けている”という人もいるのではないか。