◆オリジナルキャラクターたちが登場する意味

 周辺の登場人物で言えば、渉に思いを寄せる原作には登場しないオリジナルキャラクター・武藤花音(田中美久)が存在感を発揮している。

「みのりは『復讐のために高校生をたぶらかす』という行為をしますが、原作ではそのことを真っ向から糾弾するキャラはいませんでした。だからこそ、花音を登場させてその役割を担ってもらいました。また、オリジナルキャラとして松崎和歌子(中島百依子)も登場していますが、和歌子は不倫には寛容な価値観を持っています。花音のように不倫を悪と考えたり、和歌子のように寛容に考えたりするキャラを登場させることにより、不倫という行為について多面的に考えてほしいという狙いもあります」

◆松本まりかは“天才型”ではない? 現場での意外な姿

 次に松本の演技がどのようにして現場から生まれているのかを聞いた。

「監督の上田迅さんは松本さんの演技について、突飛だったり癖があったりするものの、それでもみのりに共感できる理由として、そこに心情的リアリティがあるからだと話していました。そして、『なぜ今この台詞なのか』『どういう言い方なのか』などを松本さん自身がしっかりと解釈しているからこそ心情的リアリティが生まれる、と説明していました」

「夫の家庭を壊すまで」
Ⓒ「夫の家庭を壊すまで」製作委員会
 直観的に演技をするのではなく、現場でディスカッションを重ねながら作品・登場人物の解釈を深めて演技していくタイプの役者であると上田氏は評しており、祖父江氏もそのことに同意する。

「松本さんを“憑依型女優”と言う人も多いように、役をおろして演じる天才型の役者というイメージが根強いです。ただ、実際は松本さんはいろいろなパターンを何度も試します。そのうえで監督と相談しながら、仕草ひとつ、呼吸ひとつを計算して作り上げていく役者なんですよね」

◆“まりかさんチャレンジ”誕生秘話

 本編では各登場人物の鬼気迫る演技を楽しめるが、エンディング終了後にはメインキャストがあやとりなどをしながら、オフのテンションで配信の告知をしている。なぜ遊び要素を加える告知にしたのか聞くと、「現在は大配信時代です」と答える。