誰よりもお洒落で誰よりもジョークの上手い彼女は、どんどんマスメディアが垂れ流す記号的な女子大生になっていった。流行りなのだろうが既視感のある服装に髪型。有名女子アナが勧める化粧と美容法。そして、彼女のジョークはどんどん誰かを「いじる」ものになっていった。

 Uに対して嫉妬するまでの憧れを抱いていた私はその変化に落胆し、おこがましくも苦言を呈したことがあるが、そんな私をUは「いつまでもサブカル」と一蹴した。Uが共通の女友だちの想い人とうっかり寝てしまったときも「酔っ払ってて断れなかった」と何の躊躇いもなく言い私を驚かせ、驚く私を鼻で笑った。

◆私を次第に見下すようになった友人

ヨガをする人
 社会人になって自由に使えるお金が増えるとUはますます凡庸になっていった。実家住まいのUは給料すべてが自分の小遣いで、年上の彼氏と付き合っていたのでデート代もかからず、いわゆる「自分磨き」に精を出した。

 ときたま会うUは完全に完璧に、ファッション誌が勧めるものすべてを身に着けており、顔にはシミも毛穴も一つもなく、爪は派手過ぎず地味過ぎないネイルがサロンで施してあった。

 会うといっても、その場所はホットヨガなどに指定され、私は体験クーポン五百円みたいなもので一緒に居させてもらっていた。Uがいつもの週末を過ごす、ゴルフやエステに付き合うほどの財力を私は持っておらず、Uが喋る呪文のような基礎化粧品の数々や誰かの噂話に私は全くついていけなくなっていた。

 でもそれは、ちゃんとした社会人になれていない私が悪いのだ。事実、Uの仕事の苦悩が私にはわかってあげられなかったし、いい歳こいてフリマで買った服を着ている自分とUのいつ会っても毎回違う最新流行のブランドバッグを見比べ落ち込んだりもした。

 そんな私をUは次第に見下すようになり、彼女なりのジョークに包まれたその態度は私がUを敬遠する理由の一つにもなった。それでも何かあると私を誘ってくれるUはやっぱり寛大で、それが大酒飲みの彼女の酒のアテであろうと、私はできる限り顔を出した。