◆アンナチュラルな俳優

 そうした山﨑賢人フォーマットの演技に対して、これまでメディアは口を揃えて「ナチュラル」だと形容してきた。うん、確かに山﨑の演技は自然体そのもので、ナチュラルだなと感じる。日本一のナチュラル俳優だと新たな異名を付与することもできるかもしれない。

 でも、演技がナチュラルというのは実はとても矛盾した言い方なのである。だって演技というのはごっこ遊びの延長みたいなもので、日常レベルで考えると、ナチュラルどころか不自然極まりない行為だから。

 だから本来不自然なはずの演技をナチュラルに見せてしまうアンナチュラルな俳優と形容したほうがずっと正しい。このあたりをきちんと精査しておかないと、山﨑賢人の真価は問えない。

◆出番前の山﨑賢人と遭遇

ゴールデンカムイ
画像はリリースより
 彼のことを同時代人としてリアルタイムで追ってきた者としては、こうした不確かな評言をどうしても見過ごせない。2024年は、30歳の節目であり、デビュー15周年というタイミングなのだから。

 でもそうか、15年間か。それはどこか筆者にとって、山崎賢人に対するコレクトな評価と言葉をひとりつむいできた孤独な15年間でもあった。だけど今年の年明け早々、『ゴールデンカムイ』(2024年)の完成披露舞台の会場で、出番前の山﨑とまさかの遭遇を果たしたのは、偶然のミラクルだった。

 15年越しの思いを伝えることもできたのかもしれない。でもそこはこらえて、誰とでも気さくに会話を楽しもうとする山﨑賢人本人を目の前に二言くらい交わして新年の挨拶ができた時間はむくわれた瞬間だったのかな。そんな風に今は、なおさら惚れ込んだ山﨑賢人30歳の誕生日を心から祝いたい。

<文/加賀谷健>

【加賀谷健】

音楽プロダクションで企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆している。ジャンルを問わない雑食性を活かして「BANGER!!!」他寄稿中。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu