『エイリアン』第1〜第4作の主人公エレン・リプリー(シガニー・ウィーバー)は、ある程度一般人に近い感覚を持ち合わせていたとはいえ、やはり勇敢で歯切れのよいヒロインというイメージがあった。それに比べ、さらに庶民的に見え、感情のわかりやすい新主人公レインは、明確に描かれた庶民(中でも貧困層)上がりのバックグラウンドも含めて観客が感情移入をしやすいキャラクターになっている。

さらに(AVP2を除く)シリーズで初めて“雇われ”でないチームがエイリアンの恐怖に対峙しながら犠牲を乗り越えてたくましくなっていくストーリー展開ということもあり、『ロムルス』は『エイリアン』シリーズの世界を「遠巻きに観て楽しむ仕事人の世界」から「一緒に怖がるみんなのSFホラー」という手が届く距離まで近づけてくれたように思える。今作によって、シリーズには新たな風が吹いた印象だ。

(c)2024 20th Century Studios. All Rights Reserved.

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音楽や小ネタにも注目

音楽が最新のSF映画群に比べてノスタルジーを感じるサウンドであった点も、シリーズのタイムラインにおける今作の位置付けを強く意識した作品であることを感じさせる。

“最新SF映画らしい音楽”を思い浮かべようとすると『TENET』の音楽(ルドヴィグ・ゴランソン作曲)のようなトガった曲風の電子音楽が脳内で再生されるが、『ロムルス』の音楽はそのような音楽ではない。ジョン・ウィリアムズを彷彿とさせるシンフォニックでまっすぐな音楽が70〜80年代の映画に浸っているような懐かしさを感じさせ、今作が『エイリアン』1,2作目の間の時系列を描いているというコンセプトを強く支えるのだ。しかし、ただ懐かしいサウンドにしたわけではなく、キレのある効果音が組み合わさることで鋭く恐怖を煽ってくる一面も印象的だった。

シリーズの中に挟まる作品とはいえ基本的には独立しており、1作だけ観ても十分に楽しめる作品であることは間違いない『ロムルス』だが、1作目を観たファンだけが楽しめる要素も含まれていたりと、ファンサービスもある作品となっているため、時間のある方はぜひ前後の作品と一緒に楽しんでいただきたい。