◆「幻覚が見える」と言い出したらどうする?

 本書は、認知症の進行を春夏秋冬の1年の季節に見立てて、3組の家族のケースを紹介していきます。そのなかには、いくつもの「なるほど!」や「そうなんだ!」という気づきや驚きが登場します。

 何か「少しヘンだ」と、家族も本人も思いつつ、「病院に足を運ぶのはイヤ、怖い」と拒否する親を、どうやって病院に連れだしたらいいのかといった、診察以前の、しかし実際に困っている人が多いだろう第1歩へのアドバイスにはじまり、認知症が進み、幻覚が見えるようになった家族(患者)を前にしたときの、よりよい対応の仕方などを教えてくれます。

 いずれも机上のそれではなく、実際に役に立つだろう知識ばかり。それを、変わらぬ矢部さんのタッチで進めてくれるので、さらりと読みながら、いつの間にか、将来へのお守りが胸ポケットにどんどん増えていくようです。