◆執筆を通じて改めてブルーライト文芸の魅力に向き合えた

 さらに、自分自身が実際にブルーライト文芸を執筆してみたことで、改めてその魅力について深く考える機会も増えたそうです。

「ブルーライト文芸って、案外裾野が広いと思うんです。読者層の中心は主人公やヒロインと同じか近い世代なのでしょうけど、自分の作品に限らず、もっと上の世代の方々にも読まれていると感じています。

 大人になれば、子どもの頃より複雑で、広く、ままならない世界を生きていかなければなりません。仕事、家庭、子育て……と、背負うものも増えてくる。個人の努力や正論、きれいごとだけでは済まされない局面も当然あります。

 でも、そんな日常を続けるなかでも、『こんなふうに生きられたらいいな』と思っている世界があると思うんです。先ほどお話したように、みんな子どもを胸に宿したままで大人になる、と私は感じています」

◆恋焦がれ、がむしゃらに生きた経験は生きる原動力になる

ぼくと初音の夏休み
※写真はイメージです
 初めて誰かを好きになり、焦れる思いでその人のことばかり考えていたあの季節。その相手のため、不器用に、がむしゃらに、頑張ることに価値を見出し、成長したいともがいていたあの時代――。

 大人の誰もがそういう時期を通り過ぎてきた。それは未熟だけれども尊くて、大人だからと冷笑し、切り捨てるにはあまりに惜しいし哀しい。

「大人として、もう二度とそんなふうには振る舞えないけど、その経験は彼方にあるかつての自分への憧憬として、大人にとっても今を生き抜く原動力になると思うんです。

 もちろん、今まさに青春時代を送っている若い方にとっても同じです。だからこそ、ブルーライト文芸が描くボーイ・ミーツ・ガール的なストーリーが、年代を問わず多くの人の心に刺さるのだと感じています」

 TikTokがきっかけで大ヒットにつながるケースもあるブルーライト文芸。若者だけでなく、大人世代にも響く内容がブームの後押しをしているのかもしれない。