だが、清家と浩子の計画はスムーズにはいかなそうだ。清家や鈴木の身のまわりで起きた不審死や事故などは浩子主導によるものだと思われてきたが、鈴木に清家が学生時代に書いた論文を送りつけた件について浩子は完全に否定。ここにきて新たな謎が浮上したが、送付した“謎の人物”の最有力は、清家の元恋人・美和子(亜里沙、田辺桃子)だろう。浩子、鈴木、美和子の3人は、かつて清家の思想を掌握する試みを取り合った因縁の関係であり、美和子は清家が大学を卒業する前に突如失踪している。生死不明の美和子が生きているとすれば、美和子から清家を切り離した浩子と鈴木を恨んでいるのは間違いなく、自身が存命であることを匂わせるために清家の論文を鈴木に送ったのかもしれない。清家が総理大臣まであと一歩のところまで来たいま、美和子が浩子の計画を無に帰す大きな一手を繰り出す展開もありそうだ。

“謎の人物”として考えられるのはもう一人、浩子の現在の夫・小松(堀内正美)のヘルパー・田所(和田光沙)だ。田所は時折浩子の動きを探るような視線を送り、道上が小松宅を訪問した際には、玄関で会話する道上と浩子を“無の表情”で見つめていた。小松と接するときの田所は“優しいヘルパーさん”そのものだからこそ、浩子に向けるネガティブな視線は怪しさが残る。それ以外に田所には気になる要素がなく“謎の人物”候補としては大穴だが、彼女の動向は注視しておいて無駄はないだろう。

 浩子は在留中国人である母を苦しめてきた日本に復讐するべく、幼少期からいままで精力的に行動してきたが、第9話の道上との対話シーンで、浩子が胸を押さえて苦しみをかみ殺すようなしぐさをしたように見えた。浩子はもしかすると大病を患っているのかもしれない。浩子が余命わずかだとしたら“悲願”を成し遂げるために急いで策を打ち出すだろう。次回第10話は清家と浩子の“悲願”をめぐる怒涛の展開がありそうだ。