そんなことが、3年前にあったんだよ、というお話。

■あくまで別の世界線として

 津野くんと水季の過去については前々回の第7話で語ったことがすべてだったと思うんですよね。今回のような距離感になったことがあって、その何年か後に津野くんの家で「中絶同意書」が見つかったときの、あの感じにはならないでしょう。

 津野くんは水季と海ちゃんを丸ごと引き受けるという覚悟を決めなかったから物語から弾き出されてしまったということを語ったのが第7話だったので、過去に「貯金もあるし」と言っていたとするなら、それは大人同士にとって「ヤッてた」より意味を持ってしまうことなわけで。

 今回、目黒蓮が使えないけど放送枠に穴を開けられないという制約の中で、何か急造しなければならない。じゃあ津野くんと水季の過去の話だよね、という結論が会議で決まったのは想像に難くないし、「とあるシングルマザーと同僚の恋」という単話のドラマとしては急造とは思えない素晴らしい出来だったと思うけど、これを『海のはじまり』の前夜譚として組み込んでしまうと、いろいろややこしいなというのが率直な感想です。

 あくまで本筋とは別の世界線、本筋の脚本家自身の手による同人作品、ファンサくらいに受け取っておいて、また来週からの本線を楽しみに待ちたいと思います。繰り返しになるけど、急造のファンサとしてはこれ以上ないクオリティだったと思います。冒頭のコンビニのドアを体で押し開ける感じ、あれだけで津野くんの生き方がだいたい伝わってくるもんね。ト書きかアドリブか知らんけど、すごいシーンだった。

(文=どらまっ子AKIちゃん)