異性の友人に「将来、お互いに独身だったら結婚しようか」と軽々しく言った経験のある人は多いのではないでしょうか。たいていは冗談やノリで言っていることが多く、そのほとんどは実際には結婚に発展していないはずです。

落ち込む男性
写真はイメージです。(以下同じ)
 しかし、その冗談を相手が本気にしたら……。

 今回は、軽々しく言ってしまったために、恐怖の体験をしたヒロキさん(仮名・45歳)のエピソードを紹介します。

◆かつて恋心を抱いた相手と同窓会で再会!実は両想いだった

 ヒロキさんは35歳の時に、中学時代の同窓会に参加しました。そこで、同じ部活で仲が良かったマリさん(仮名)と再会したのです。

「実は、中学時代はマリのことが好きだったんです。でも当時、マリは僕のことを男友達としてしか見ていない感じがして、告白する勇気が出なくて。

 ただ、同窓会でお酒も入っていたし、昔のことが懐かしくなって『あの時、マリのこと好きだったんだよね』とポロッと言ってしまったんです。そしたらマリが『え! 私も!』と。両想いだったのかと、正直嬉しくなりました」

 ヒロキさんとマリさんの様子を見ていた他の同級生たちも、お互いの告白に盛り上がって「お前たち、結婚しちゃえよ!」とはやし立てたそうです。

◆その場のノリで「将来、お互い独身ならね」

おしゃれなバーで同窓会を楽しむ男女
 あまりにも周りが盛り上がってしまい、苦笑いをしながら困っているマリさんを見て、ヒロキさんは『マリが困っているからやめろよ』と言ったそうです。しかし周りの同級生たちはなかなか収まらなかったそう。

「みんなが盛り上がっているところに水を差すのも悪いと思い、『うーん、じゃあ、あと10年後にお互い独身ならね。マリが嫌じゃなければの話だけど』と咄嗟にノリで言ってしまいました。

 でもマリも『あはは、ヒロキと結婚しないように、早く良い人見つけないと』と笑いながら返してくれたので、冗談だと受け取ってくれている感じでした。マリと連絡先を交換することもなく同窓会は終わったので、恋に発展することもないと思っていたんです」

◆10年後、目の前に現れたのは……

 その後、ヒロキさんは仕事関係で知り合った女性と付き合うことに。その女性はヒロキさんよりも一回り年下で出会った当初は恋愛対象ではなかったそうですが、仕事を通して尊敬できる存在となり、結婚を前提にしたお付き合いに発展しました。

 そしてヒロキさんが40歳になる交際1年後に結婚し、その2年後には子どもも授かって幸せに暮らしていました。そんな日々の中、ヒロキさんが暮らすマンションに突然マリさんが訪ねてきたのです。

「その日は日曜日で仕事が休みだったので、家族で自宅にいました。妻が洗い物をしていたので、僕がインターホンのカメラを見てみると、同級生のマリが映っていてビックリしました。『あれ? どうしたの?』と聞くと『直接会って話したい』と言われたので、エントランスを開錠して家まで来てもらうことにしました」

◆「やっと結婚できるね」の一言にゾッ

婚姻届を持ってきた女性
「何か急用だろうか? まさか、同級生の誰かが亡くなった?」などと思い、マリさんを自宅まで招いたヒロキさん。ヒロキさんが玄関を開けた途端、マリさんが差し出したのは婚姻届でした。

「最初は、何の紙なのか把握できませんでした。『え? 何これ?』と戸惑っている僕に、マリは『10年間待ってたの! やっと私たち結婚できるね』と笑顔で言ってきたんです。

 何のことかわからずに『え?』と繰り返す僕に、マリは『10年前の同窓会で、10年後に結婚するって言ったじゃない! 忘れたの!?』とさっきの笑顔とは正反対の、すごい剣幕でまくし立ててきました」

 やっと事情が飲み込めたヒロキさんは、まさかマリさんが本気にしているとは思ってもみなくて、心底ゾッとしたそうです。そして、あの同窓会で言ったことは冗談であること、そして現在は結婚しているからマリさんとは結婚できないことを伝えました。

◆「人でなし!」と大激怒

 するとマリさんはさらに険しい表情になり『私の10年間を返して!』と怒鳴りました。

「『10年間待っていたのに。結婚するって言ったじゃない!』などと、ものすごい勢いで怒鳴られて……。それでも僕は謝ることしかできなかったのですが、ひとしきり暴言を放ったマリは『もういい!』と婚姻届を破り捨てて帰っていきました。

 玄関にはバラバラになった婚姻届が散らばっているし、妻と子どもは奥の部屋で怯えているし、僕は恐怖で呆然としているし。カオスな状態でした……」

 その後、逆恨みが怖くなったヒロキさんはすぐに引っ越しをすることに。実家や仲の良かった同級生にも事情を説明し、マリさんに新しい住所を教えないよう釘を刺したそうです。

 何気なく放った一言が、相手の人生を変えてしまうことがあります。たとえそれが飲みの場の冗談だったとしても、相手の心には深く刻まれているかもしれないと、肝に銘じたいですね。

<文/nami イラスト/zzz>

【nami】

3人の子をもつママライター