◆専門知識が必要なため、ハードルが高かった

Netflixシリーズ「地面師たち」(Netflixにて独占配信中)©新庄耕/集英社
Netflixシリーズ「地面師たち」(Netflixにて独占配信中)©新庄耕/集英社
 一方で、手口が複雑で巧妙、そして専門知識がないと理解が難しく、そもそもの事件がドラマチックだからこそ、オリジナルの地面師ものを作る作劇上のハードルは高かったことが想像できます。

 そして結果、事実をなぞらざるを得なくなってしまう――現に新庄氏の原作小説も前述の事件に基づいたものになっています。

◆どの映画会社、テレビ局にも断られている

 2022年に出版された小説『地面師たち』の文庫版あとがきには、大根仁監督が映像化の企画書を映画会社やテレビ局等に持ち込むも、「会社的に絶対に通りません」と不動産会社との関係性によってなかなか受けてもらえなかったという、当時の苦悩が綴られています。

Netflixシリーズ「地面師たち」(Netflixにて独占配信中)©新庄耕/集英社
Netflixシリーズ「地面師たち」(Netflixにて独占配信中)©新庄耕/集英社
 現に、筆者と親交のあるテレビドラマ関係者からも、小説『地面師たち』のみならず、地面師ものを作ろうとしても、どうしても例の事件が連想されてしまうため企画が通らないという話を聞きました。地面師ものが成立したとしても、『相棒』(テレビ朝日系)などのシリーズ物の中で地面師について軽く触れる程度しかできなかったのだそうです。

 それもそのはず、被害を被ったスポンサー企業を刺激して、広告撤退となったり関係性が悪化してはいけませんからね。『地面師たち』が成立に至るには相当な困難があったことが予想されます。

 そんな大根監督の苦労の末に、Netflixによって配信開始されたこのドラマ。広告収入に寄りかからないNetflixで成立したからこその強みが存分に生かされています。

◆実在企業の名前が続々。抗議を恐れない表現

Netflixシリーズ「地面師たち」(Netflixにて独占配信中)©新庄耕/集英社
Netflixシリーズ「地面師たち」(Netflixにて独占配信中)©新庄耕/集英社
 石洋ハウスなど、ターゲットとなった企業は、さすがに小説の通り名前が変えられてはいますが、競合他社として挙げられている東急、三井、森などはそのまま。疑惑が絡んだ不審死について言及する場面でも、かつて存在していた企業・ライブドアの名前がそのまま登場します。