家賃も滞納しないしゴミの分別もちゃんとしていたと聞いて、夏の知っている自由人の水季らしくないと思うが、大家は「そういう人ががんばってそうしてたんでしょうから」よりちゃんとしていたのだろうと水季の努力を認めてくれた。こんな理解力のある大家さん、いいなあと思う。

◆「僕のほうが悲しい自信があります」津野くんのせいいっぱいの意地

別の日は、夏が微妙に左右ふぞろいながら海に三つ編みをして、図書館へ出かける。残念ながら休館日だったが、海が津野(池松壮亮)を呼び出し、特別に開けてもらえた。

(C)フジテレビ
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休日の勤務先を貸切状態で楽しむといえば、池松壮亮主演映画『ちょっと思い出しただけ』を思い出す。池松演じる主人公が水族館でバイトをしていて、休日、水族館に忍び込み、恋人(伊藤沙莉)とはしゃぐエピソードがあるのだ。

『海のはじまり』でも池松演じる津野は、一度、休日に図書館に入ってみたかったと言って、海以上にはしゃぐ。初回からずっと浮かない顔ばかりしていた津野くんが大声を出して明るく笑いながら走りまわり、ぐいっと海を抱き上げる。この一連の場面は最高に解放感にあふれていた。

津野は、やってみたかったという、昼間に図書館でビールを飲むことを、夏につきあってもらう。そこで彼は「比べるもんじゃないとかよく言いますけど、月岡さんより僕のほうが悲しい自信があります」とマウントをとる。

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それから部屋のソファでみつけた髪ゴムを水季につける。せっかく夏が結った三つ編みをほどいて、ひとつ結びに。

このとき海が少し夏を気遣うのと、三つ編みのおかげで髪にふわふわとウエーブがかっていい感じになっているところには救いがあるが、手際よく津野が髪をほどいてほぐす手つきを見る夏の顔はせつなそうだ。まるで「月岡より津野のほうが髪を結う自信があります」を見せつけられたように。

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でも法的にも血縁的にも関係性の弱い津野くんのせいいっぱいの意地だからここは津野くんのやりたいようにやらせてあげたい。