2020年度から私立高校授業料の就学支援金の制度が変わり、実質無償化となるケースもあると話題になっています。これは誰にでも当てはまることなのでしょうか。公立高校と私立高校の支援金の差や、制度変更によるメリット、制度活用の際の注意点について詳しく解説していきます。

公立高校と私立高校の学費の差はどのくらい?

(画像提供:one-pixel-studio/stock.adobe.com)

私立高校と公立高校を比較すると、授業料の負担はどれほど違うでしょうか。公立高校の授業料と比較しながら考えていきます。

公立高校と私立高校それぞれの学費は

2019年に文部科学省が発表した「平成30年度子供の学習費調査」によると、1年間に保護者が支出した学校教育費の平均は公立高校(全日制)で28万487円、私立高校(全日制)では71万9,051円でした。これには授業料のほか、学用品、制服、教科外活動費、通学費なども含みます。

授業料のみで比較をすると、公立高校の授業料は平均2万5,378円。それに対し、私立高校の授業料は平均23万26円でした。

公立高校(全日制) 私立高校(全日制)
学校教育費 28万487円 71万9,051円
うち、授業料 2万5,378円 23万26円

私立は公立の2倍以上の学費がかかる!

上記の調査結果から、私立高校は公立高校と比較して2倍以上、学費が必要なことがわかります。授業料のみで比較すると、私立高校は公立高校の10倍近くかかる場合があり、子どもを私立高校へ通わせることは保護者にとって負担が大きいのが現状です。

私立高校の授業料無償化とはどんな制度?

(画像提供:maroke/stock.adobe.com)

上記で紹介した私立高校と公立高校の学費の差。これを埋めることに一役買っているのが2020年4月からスタートしている「高等学校等就学支援金」の制度改正です。この制度は返金不要の授業料支援のこと。適用となる条件や支援内容を詳しく見ていきましょう。

2020年4月から拡大!制度の対象者は?

高等学校等就学支援金制度は、受給資格の1つに所得(世帯年収)要件があります。したがって、すべての生徒が対象になるわけではありませんが、全国で約8割の生徒が利用しています。また、所得要件については2020年4月から6月の間は従来の通り、都道府県民税所得割額と市町村民税所得割額の合算額(両親2人分の合計額)が判定基準でした。

これが変更され、2020年7月からは「課税標準額(課税所得額)×6%-市町村民税の調整控除の額」の式で算出される金額(両親2人分の合計額)によって判定されるようになりました。

家族構成や共働きかどうかにより異なりますが、モデル世帯(両親・高校生・中学生の4人家族で、両親の一方が働いている場合)では、世帯年収が約910万円未満の場合、通学する高校が私立・公立にかかわらず、上限額11万8,800円(基準額)の支援を受けられます。

また、私立高校に通う生徒の場合、世帯年収に応じて基準額に加算されます。上記のモデル世帯の場合、目安として世帯年収が約590万円未満であれば、一律に上限額39万6,000円が支援されるように制度が改正され、2019年度までよりも家庭の授業料負担が少なくて済むようになりました。

就学支援金は、生徒が申請することにより学校設置者にわたり授業料に充てられます。授業料が支援額上限未満の場合は家庭の授業料負担が実質0円となるので、その仕組みが私立高校の授業料実質無償化と言われている理由です。

都道府県によってさらなる支援があることも

国の高等学校等就学支援金制度に加えて、都道府県によってはさらに支援を受けられる場合があるので確認しておくとよいでしょう。例としては、授業料や施設費等納付金および入学金が補助される埼玉県の「父母負担軽減事業補助金」や、京都府の「京都府あんしん就学支援制度」などの制度が挙げられます。

就学支援金を受けるには申請が必要

高等学校等就学支援金制度を活用するには申請が必要です。自動的に制度が開始されることはなく、高校入学時の案内に沿って必要書類の提出が必要となるので気をつけましょう。

すべてが無償ではないことに注意!

高等学校等就学支援金制度は高校での学習にかかわるすべての費用が対象というわけではありません。対象となる費用は「授業料」です。入学金や制服、修学旅行ほかイベント、学用品に関わる費用などは、これまでと同様に家庭の負担となります。