香川県三豊市の粟島には、届け先のわからない行き先不明の手紙が届く小さな島の郵便局があります。瀬戸内国際芸術祭を機にアートプロジェクトの一つとして誕生した「漂流郵便局」に行ってみませんか?

粟島とは?

香川県三豊市にある粟島は瀬戸内海に浮かぶ人口200人ほどの小さな島です。3つの島が潮の流れによってひとつに繋がり、スクリューのような形が特徴的な島で、国の登録有形文化財に指定されている日本最古の海員養成学校があり、旧校舎を利用した粟島海洋記念館などが現在も形を残しています。4年に一度開催される瀬戸内国際芸術祭の会場の一つにもなっています。

漂流郵便局って?

2013年の第2回瀬戸内国際芸術祭の作品の一つとして現代アーティスト久保田沙耶さんによって、築50年木造の旧粟島郵便局舎を利用したアートプロジェクトである漂流郵便局が誕生しました。

いわゆる一般的な郵便局の機能はとうの昔になくなりましたが、届け先の分からない手紙を受け付ける郵便局として「漂流郵便局留め」という形で局内に全国から寄せられた「誰かに届けたい想い」を綴ったハガキを展示、保管しています。2022年にはテレビドラマ「ミステリーと言う勿れ」にも登場し、ドラマファンも足を運ぶようになりました。

漂流郵便局での楽しみ方

芸術祭が終わった今も世界中から沢山の手紙が寄せられ、ここを訪れた人は届いた手紙全てを自由に読むことができます。国内外から集まった手紙やハガキの数は5万通に達します。

中央のポストのオブジェや棚には多くの手紙やはがきが保管されている。

この建物の所有者でボランティアの中田さんは元郵便局員で、届いた手紙すべてに目を通し、印を捺し、局内のオブジェに積んでいきます。天国へ行ってしまった家族、友人、恋人などへ宛てた手紙で、見知らぬ人の悲しみに触れるのですが、穏やかな表情で去ることができました。

手に取って思い思いに読むことができる

当初は芸術祭期間限定だったそうですが、必要な場所だから続けようと決意し、自費で管理・修繕して場を整えながら作品を守り、今も公開を続けています。漂流郵便局はアート作品から、人々の心の漂着を許してくれる特別な場所へと変貌していったのです。

漂流郵便局への手紙の出し方

”行き先のない手紙”を預かってくれる世界でたったひとつだけの郵便局で、漂流郵便局留めで世界中どこからでも手紙を送れば誰に宛てた手紙でも受け付けてくれます。また、漂流郵便局に直接投函することもできます。

中には何度も手紙を出している人もいましたし、送った手紙の返却はしていませんが書いた本人が自分の手紙を探しに来たりすることもあるようです。こちらを訪れた人は思い思いの時間を過ごしていくのです。