「芸能界のドン」といえば古くは“ナベプロ帝国”を築いた故渡辺晋氏や“演歌界のドン”と言われた故長良じゅん氏、大手芸能事務所・ホリプロ創業者の堀威夫氏などが有名だ。近年でいえば、田邊氏とバーニングプロダクションの周防郁雄社長の存在が広く知られており、田邊氏に関しては中曽根康弘元首相、渡辺氏、堀氏に続いて芸能界最大の業界団体である「日本音楽事業者協会(音事協)」の会長職も務めている。中堅芸能事務所のベテランマネジャーはこう語る。

「田邊さんしかり、渡辺さんしかり、堀さんしかり、彼らはみなバンドマンから裏方に転身したいわゆるミュージシャン出身です。それに対して周防さんはマネジャー、長良さんは興行師と元々が裏方出身となります。元バンマス出身の田邊さんは良くも悪くも直情型で面倒見の良い親分肌の人。その一方、生粋の裏方出身である周防さんは普段あまり感情を表に出さず“ドン”とは思えないほど腰も低い反面、そのぶん何を考えているかわからない怖さがある。まさに権謀術数に長けたタイプと言えるんじゃないですかね」

 一時期は田邊氏と周防氏の対立が取り沙汰されたこともあったが……。

「業界のドン同士ですから利権がぶつかることもあるでしょうし、先に触れたように性格や生きてきた土壌が違いますからね。意見が対立することもあるでしょうけど、お互いの存在は認め合っていますし、表向き周防さんは業界の先輩である田邊さんのことは立てていますから。“小競り合い”こそあれ、本気で潰し合うようなバトルは起こらないでしょう」(同)