◆古着の浴衣で楽しい花火大会!……のハズが

「古着屋さんには、浴衣が2000円台から売っていました。私が選んだのはオレンジ色のちょっとレトロな花柄の浴衣。帯は別売りでしたが、すべて1000円以下で浴衣と合わせてもたったの3000円! 着付けに行くお金もないので雑誌を見ながら自分で練習しました」

 いよいよ花火大会デートの当日。沙知さんは髪の毛も自分でセットして、彼氏と待ち合わせます。

「彼は私の浴衣姿を見るなり『カワイイね』と言ってくれてすごく嬉しかったです。屋台で食べ物を買って、開始ギリギリで座れる場所を見つけて、花火大会が始まりました。勢いよく上がる花火を見て『キレイだねー』と言う彼にドキドキ。幸せだなーなんて思いながら花火を眺めていました」

 彼氏との花火大会を満喫していた沙知さんですが、しばらく花火を見ていると、遠くのほうにあった大きな雲がどんどん大きくなってきました。急に雲行きが怪しくなり、そしてついに豪雨まで! 突然の大雨に、会場は大パニック。

突然の豪雨
「雨はそのまま止むことはなく、しばらくすると花火大会中止のアナウンスが流れてきました。私はというと雨で髪はグチャグチャ、自分で着付けした浴衣は見るも無残なほどに着崩れしてしまいました。

 人が集中した駅には入場規制がかかり長蛇の列、タクシーも交通整理のためつかまらない。泣きそうになっている私に『浴衣が乾くまでどこかに入ろう』と彼が提案し、急きょ近くのビジネスホテルに入ることになったんです」

 ホテルに入った沙知さんは、ずぶ濡れになった浴衣をカーテンレールにかけたそうです。

「その日は疲れてすぐに眠ってしまいました。いま思えば、寝る前に気が付けば良かったんです。

 朝起きて干している浴衣を見てビックリ! 浴衣の柄が変わっているんです。なんか色かにじんでいるような……。もしかして色落ちしてる!? と気付いた時は既に遅し……。アイボリー色のホテルのカーテンには浴衣のオレンジ色がしっかりと色移りしていました……」

カーテン
 カーテンを外して洗ってみましたが、しっかり色が着いてしまったようでまったく落ちませんでした。

「さすがに隠しようがないので、フロントに電話して部屋に来てもらいました。従業員もカーテンを見るなり『さすがにこれは……』と絶句していましたね。

 ホテルの備品って壊したりしても基本弁償代はないそうなのですが、5000円以上の物はさすがに弁償させられるそうです。従業員も『そういうご事情なのに大変申し訳ないのですが……』と同情してくれましたが、カーテン代7千円はしっかり請求されましたね……」

 格安の浴衣のはずが、逆に高くついてしまった沙知さん。ゲリラ豪雨も多いこの季節。服を選ぶ時は色落ちしない素材か、よく考えることをオススメします……。

―シリーズ 夏の恋愛エピソード vol.1―

<文/結城 イラスト/鈴木詩子>

【結城】

男女観察ライター。鋭い視点で世の男女を観察し、 夫婦問題からイタい火遊びまで、幅広いエピソードを華麗に紡いでいく。Twitter:@yuki55writer