◆ついに浮気を認めた夫。そのまま別居へ

「女の人がいるんでしょと言ったら、『なりゆきでつい』って。その女性が恋人にふられて慰めていたら迫られて、つい深い関係になってしまったということでした。

『抱きつかれて、何もせずに帰すことができなかった』と夫は言うんだけど、そこが夫の甘いところですよね。それで彼女がますます悩む結果になるかもしれないのに。さすがに私も、この人とは一緒に暮らしていけないと思って、今は顔を見たくない、店で暮らしてと追い出したんです」

車
 店の2階は狭いながらもひとりで暮らすには充分なスペースがある。夫は身の回りのものを車につめて出て行った。高校生の長女と長男は笑って見送ったという。なぜかこの一家、深刻にならないのだ。ただ、イツコさんは本気で離婚を考えていた。

「子どもたちはよく夫に会いに行っていたようですが、私は夫がいなくなったことで、実は自分が今までけっこう我慢してきたのかもしれないと気づいたんですよね。女性にヘラヘラする夫を野放しにしてきたし、そういう男だからしかたがないと思ってきたけど、案外、私はそれがいやだったんだ、と。心の奥底では、私だけを見つめてくれる人がほしいと若いころから思っていたのかもしれない」

 子どもたちからはときどき夫の様子を聞いていたが、イツコさんは会う気になれなかった。近いところにいるのに、夫とは心が離れたような気がしていた。