「80年代には主流だった片手バックハンドですが、ボルグ、コナーズらレジェンドが片手バックのライバルを粉砕したことで急速に両手バックが普及。90年代にはすでに片手バックのほうが少数派となりました。それでも、フェデラーを筆頭にその見た目の美しいシルエットや、BIG4に続く実力者だったワウリンカの大砲のような威力がファンを魅了し続けてきた。しかし、2024年2月に約5年間トップ10に君臨していたチチパスが11位に転落し、長いツアーの間で初めて片手バック使いがトップ10から姿を消しました。最新の世界ランキングのトップ10の片手バックハンド使いは10位のディミトロフ一人で、このトレンドは覆ることはないでしょう」(前出・スポーツライター)
では、なぜこの由緒ある美しい技術が衰退してしまったのか。テニス誌ライターが解説する。
「単純に、両手バックに比べて片手バックは技術的に難しいというのが一つ。両手バックは打点への汎用性は高く、ラケットやガットの進化、選手のフィジカルの巨大化によって、そこにパワーも乗せられるようになった。片手バックは高い打点に弱いとされ、フェデラーがナダルにそこを狙われ続けたのは有名です。また、お金がかかるテニスにおいて、将来プロを目指す選手たちを育成する側の指導者からしてみても片手バックを教えて、選手が上達しなかったときの責任を考えると、まずは教えやすく主流の両手バックで教えようとするでしょう」
“絶滅危惧種”となった片手バックハンドは、このままテニスの歴史から消えていくことになるのだろうか。