逮捕された狩山を待っていたのは、権力に屈したように見えていた仲間たちの援護だった。弁護士の秋澤(斎藤工)は狩山を裏切り磯田の支配下を選んだふりをして、帝和建設の内部に入り込み不正の証拠探しを行っていた。さらに、かつて狩山の弟分だった南雲(一ノ瀬颯)は不正を口外しない代わりに栄転させようとする磯田の誘いを断り、南雲の婚約者・本宮(山本舞香)は南雲が狩山から引き継いだ不正に関するデータを秘密裏にコピーしており、このコピーデータによって狩山の再審は大きく前進した。本宮は南雲の浮気を疑うなかで偶然データを見つけただけに、もしも南雲に同僚の婚約者がいなければどんでん返しは起きなかっただろう。まさに本宮・南雲の部下コンビによるファインプレーといえる。

 龍神大橋の崩落事故は、磯田が不正への関与を認めたことで狩山の無実が証明された。磯田は騙し合いの官僚時代を生き抜いてきたエリート階層であり、筆者は磯田自ら罪を認める展開を想像していなかった。冷酷な磯田であっても良心がわずかにあったのだろう。

 本作品を通して実感したのは、誰もが大なり小なり“罪”を背負って生きているということだ。無実でありながら会社の罪を背負う道を選んだ狩山をはじめ、自身の無責任な言動により依頼人が自ら命を絶ってしまった過去を背負う秋澤、龍神大橋の一件で上層部に逆らえず不正に加担した南雲、そして東京都が威信をかけて取り組む黒鉄島プロジェクトの体制を整備する時間を稼ぐため、龍神大橋の“意図的な崩落”にゴーサインをだした磯田など、狩山の脱獄劇のなかでそれぞれの葛藤が描かれた。多くの人は罪から目を背け、無関係を決め込む。しかし、崩落事故に関わったキャラクターたちは、ある者は自ら罪を直視し、ある者は狩山に触発されて罪に向き合い始めた。限られた放送回で十人十色の改心の過程を描いて着地させたのは拍手ものだ。