◆温泉宿で、夫が女性と取っ組み合いに
「旅館に到着して、まずは温泉とばかりに息子は夫と、娘は私と分かれて行動。すると部屋に戻ってから夫が黙り込んでいるんです。息子に聞いても『わからない』と。何があったのか尋ねましたが、夫は『別に。なんでもないよ』と沈んだ様子でした。じゃあ、子どもたちを連れて旅館内のゲームコーナーでも行ってくるわと、とりあえずひとりにしたんです」
ふだんは口数が多く、めったに沈んだ様子を見せない夫だけに気にはなったが、こういうときはひとりにしておくほうがいいだろうとルミさんは判断したのだ。そのあたりは結婚14年の勘である。
「ゲームコーナーで遊んでいると、急に旅館の中が慌ただしくなって……。何があったのかと廊下に出てみると、夫が女性と取っ組み合いしているんですよ。
夫はふだん穏やかなタイプですし、女性に手をあげる人ではない。何が起こったのかさっぱりわからなかったけど、急いで近くまで行きました。中学生の娘には弟を連れて部屋へ行くように言い置いて。とにかく夫の醜態を子どもたちには見せたくなかった」
近くまで行くと、すでに騒ぎはおさまっているようだった。だが夫が捨て台詞のように、「おまえにオレの気持ちがわかるか」と叫んだのが聞こえた。女性のほうも「なによ、嘘つき」と大声を出している。
「夫は私に気づくと、ひゅっと顔を背けたんですが目が真っ赤だった。泣いているように見えました」