日本人女性の約半数が、月10万円未満の年金でやりくりしているといわれています。

女性の2人に1人が90歳以上生きる時代、特に専業主婦が「年金依存」するのは危険です。

今回は、日本FP協会で講師として登壇してきた筆者が、専業主婦の方が、年金額を増やす方法、年金に依存しない老後対策について解説します。

男女の年金格差はかなり大きい

男女間の年金格差は依然として大きな問題です。厚生労働省の『厚生年金保険・国民年金事業年報』によれば、令和4年における老齢厚生年金の平均受給月額は、65歳以上の男性が16万7,338円であるのに対し、65歳以上の女性は10万9,165円でした。

これはあくまで平均額であり、実際の受給額は個々人によって異なります。しかし、一般的な傾向として「男性の平均額が女性の平均額を上回る」という事実は変わりません。

専業主婦がもらえる年金額を増やす方法

扶養家族として国民年金に加入している公務員や会社員の妻(第三号被保険者)でも、工夫次第で年金額を増やすことが可能です。ここでは、専業主婦が年金を月10万円以上受け取るための方法について考えてみましょう。

繰下げ受給

専業主婦の方が、年金を月額で10万円を超えるためには、71歳から72歳頃に受け取りを開始(繰下げ受給)するのが現実的な選択肢の一つです。

繰下げ受給とは年金を65歳から受け取らず、66歳以上75歳未満で受け取り始める制度のことです。

年金を1ヵ月遅らせると、受け取れる年金が0.7%増額します。例えば、75歳まで繰り下げると、年金額が元の金額に84%(0.7×12ヵ月×10年間)プラスされ、184%に増額されます。 ただし、あまりに後ろ倒しにすると、年金を受け取る前に万が一のことが起きてしまう可能性があります。

パートやアルバイトで働く

専業主婦が将来の公的年金を月10万円以上にするために働いて社会保険料を納めるという方法もあります。

正社員で働くのはもちろん、パート・アルバイトでも条件を満たせば社会保険の加入対象となるため、前向きに検討しましょう。なお、2024年6月現在は、従業員数101人以上の企業で働く人の場合、以下のすべてを満たしていれば社会保険に加入できます。

● 週の所定労働時間が20時間以上
● 月額賃金が8万8,000円以上
● 2か月を超える雇用の見込みがある
● 学生ではない

また、働くことで、万が一自分が病気やけがなどで障害がある状態に陥った場合、障害基礎年金に加えて障害厚生年金が受け取れます。プライベートでの病気、けがで仕事を休んだ場合も、傷病手当金を受け取ることが可能です。いざというときのセーフティネットを増やすという意味でも、できる範囲で働くことも検討しましょう。

追納する

過去に国民年金保険料の免除を受けていた場合、後から保険料を納めることで年金額を増やすことができます。

追納する保険料は月約1万5,000円~1万7,000円ですが、過去10年分までしか追納できません。

仮に全て払っても、40年分の年金で年間81万6,000円(令和6年度)しか受け取れないため、追納だけで年金を月10万円以上にするのは難しいです。

任意加入する

国民年金保険料の納付期間が40年に満たない場合、60歳以降も任意で加入できます。ただし任意加入するためには、以下の要件を満たしている必要があります。

● 日本国内に住所がある
● 年齢が60歳以上65歳未満
● 国民年金の繰上げ支給を受けていない
● 20歳以上60歳未満までの保険料納付月数が40年(480ヵ月)未満
● 厚生年金保険、共済組合などに加入していない

しかし任意加入をしても、追納と同様、年間81万6,000円以上にすることはできません。

やはり有効なのは、繰下げ受給と労働、となりそうです。

専業主婦は「年金依存」せず賢く資産運用を

女性の年金対策の鍵となるのが、賢い資産運用と情報収集です。年金が少なく、働きに出るのが難しかったとしても、やり方次第ではお金に困らない老後を過ごせるようになります。

まず、iDeCoなどの資産運用には、早いうちから取り組みましょう。iDeCoは毎月5,000円から掛金を設定できる(ただし、国民年金保険の加入資格により上限あり)ので、毎月無理のない範囲で老後資金を積み立てていくことが可能です。NISAを使って資産形成をしても良いでしょう。

こちらは1,000円程度から始められる証券会社もたくさんあるので、よりハードルが低くなります。そのほかにも、条件を満たせば申請により受け取れる助成金、補助金の制度がないかなど、お金に関する情報には常にアンテナを張っておきましょう。

文・荒井美亜(金融ライター/ファイナンシャル・プランナー)
立教大学大学院経済学研究科を修了(会計学修士)。税理士事務所、一般企業等の経理を経験して現在は金融マネー系ライターとして活動中。日本FP協会の消費者向けイベントにも講師として登壇経験あり。