兵庫県神戸市の「神戸ファッション美術館」では、「だるまさん」シリーズなどで子どもたちに広く愛される絵本を生み出してきた作家・かがくいひろし氏没後初の大回顧展となる「日本中の子どもたちを笑顔にした絵本作家 かがくいひろしの世界展」が、6月29日(土)~9月1日(日)の期間開催される。

乳幼児からも支持される絵本を生み出したかがくい氏

『だるまさんが』2008年 ブロンズ新社

絵本のミリオンセラーは、1960~70年代に刊行された作品が大半を占める。そのなかで、かがくいひろし氏が手がけた「だるまさん」シリーズは、2000年代に出版されたにもかかわらず、すでにシリーズ累計発行部数900万部を超える。

特別支援学校のベテラン教員だったかがくいひろし氏(1955~2009年)は、50歳で遅咲きのデビューを果たすや、病で急逝するわずか4年の間に驚異的なスピードで16作品を世に送り出し、言葉を話せない乳幼児からも熱烈に支持される絵本を生み出した。

作家や絵本の世界を7つの章に分けて紹介

『なつのおとずれ』2008年 ©Hiroshi Kagakui/PHP研究所

子どもたちの生き生きとした反応や笑い声を引き出す「かがくいひろしの絵本」は、障がい児教育の現場で培われた知見や実感から生まれている。没後初の大回顧展となる「日本中の子どもたちを笑顔にした絵本作家 かがくいひろしの世界展」では、作家のライフヒストリーと絵本の世界を7つの章に分けて紹介。絵本原画や制作資料、教員時代の貴重な映像記録や教材などから、日本中の子どもたちを笑顔にした作家とその絵本の魅力に迫る。

『だるまさんが』初期ダミー本の原画 2007年 ©Hiroshi Kagakui

第1章は『笑いのまんなかに』。代表作「だるまさん」シリーズの原画・制作資料とともに、未完となった続編ラフ、アイデアノートに残された「だるまさんかるた」のスケッチなど、だるまさん関連の資料を一挙展示する。

第2章は『人を楽しませることが好きな少年』。かがくい氏の生い立ちから大学時代までを紹介する。障がい児教育の道に進む出発点となったであろう自筆メモも公開される。

第3章は『特別支援学校のかがくい先生』。生徒一人一人に向き合い、反応を引き出す教材や楽しめる授業を考えたかがくい氏。同僚と取り組んだ人形劇「つくし劇場」や、生徒と作った作品、訪問部時代の授業の映像など、のちの絵本づくりにつながる教員時代の貴重な資料を展示する。

『おもちのきもち』講談社絵本賞応募時の原画 2004年 ©Hiroshi Kagakui

第4章は『絵本の仲間たち』。デビュー作となった「おもちのきもち」をはじめ、全16作品の絵本原画・制作資料を展示する。

第5章は『ちいさな生活の一間から』。身のまわりの日用品や食べ物を絵本に取り上げ、家族が過ごすリビングの片隅で制作していたかがくい氏の、娘のデッサンや家族に贈ったカードなどプライベートな資料を展示する。

かがくいが手づくりした人形/撮影:黒澤義教

第6章は『自分の表現を探して』。同僚との人形劇活動を終えて絵本デビューするまでのかがくい氏は、自身の創作スタイルを模索。絵本のイメージとは全く異なる、かがくい氏が本来好んだシュールで個性的な世界観の作品群を展示する。

第7章は『物語はつづく』。デビューからわずか4年で急逝したかがくい氏のもとには、たくさんのラフが遺された。NHK日曜美術館で紹介された「ぞうきんがけとぞうさんがけ」をはじめ、未完作の数々を公開する。

この夏は、かがくいひろし氏とその絵本の魅力に触れられる大回顧展「日本中の子どもたちを笑顔にした絵本作家 かがくいひろしの世界展」へ足を運んでみては。

■神戸ファッション美術館
住所:兵庫県神戸市東灘区向洋町中2-9-1
開館時間:10時〜18時 入館は17時30分まで
休館日:月曜日、7月16日(火)、8月13日(火) ※7月15日(月)、8月12日(月)は開館
観覧料:一般1,000円、大学生・65歳以上500円、高校生以下無料、神戸市内在住の65歳以上は無料
HP:https://www.fashionmuseum.jp

©Hiroshi Kagakui

(山本えり)