近年、新しい企業年金として会社で説明を受けたり、自分で調べてiDeCoに加入するなど「確定拠出年金」を始める人が増えています。しかし、始めてみたものの、しくみや手続きがよくわからずそのまま放置してしまっている、という人も少なくないようです。
確定拠出年金をほったらかしにすると起きること
確定拠出年金は、一度設定しておけば一定金額が一定の運用商品の購入にあてられ、どんどん積み立てられていきます。何に、いくらずつ投入していて、どれくらい増えているのか、通常はこれらを年に1回程度、確認しておけば問題ないでしょう。
ただ、なかには放置して適切なタイミングで適切な手続きをしなかった結果、想定外の事態になって困ってしまう人もいます。
自動移管されていたケース
Aさんは長年働いた会社を辞めて、転職した。転職に伴って引っ越しをしたり、転職先で与えられた新しい仕事に挑戦したり、バタバタと忙しい日々を過ごしている中「自動移管通知」が届いた。それを見て、前の勤務先の企業型確定拠出年金を放置していたことを思い出した。
確定拠出年金を利用していたのに転職時や退職時の手続きをしないまま6ヵ月を過ぎると、それまで積み立てた資産が「自動移管」されることがあります。
自動移管されると、それまで保有していた投資信託などは自動的に売却・現金化され、そのまま運用されない状態になります。
しかも自動移管の手数料として4,000円程度、自動移管されているあいだの管理手数料として毎月50円程度、さらに、自動移管された資産を転職先の確定拠出年金やiDeCoに移管するための手数料も数千円程度かかります。
忘れがちな手続きですが、明確なデメリットがありますので、転職先に問い合わせるなどして早めに手続きを済ませましょう。
正しく運用設定ができていないケース
勤務先で企業型確定拠出年金の説明を受け、始めてみようと思ったものの、よくわからないまま適当に手続きを済ませた。その後、詳しい人と一緒に確認したところ、投入したお金の全額が定期預金に回っていて、思ったような投資ができていないことに気が付いた。
確定拠出年金では、どんな運用商品にお金を投入するかは自分の判断次第です。Bさんは「確定拠出年金=投資」と考え、多少のリスクを取りつつどんどん増やしていくものだと思っていましたが、実際は通常の定期預金と変わらず、ほとんど増えないものになっていました。
iDeCo(個人型確定拠出年金)の場合は、企業型と違い、手数料を自分で負担します。「しっかり増やしたいと思っていたのに、手数料を払って定期預金しただけだった」「なるべくお金を減らさないようにしたいと思っていたのに、リスキーな商品を購入していた」など自分の希望とズレが生じないよう、お金を投入する先をよく考えて選ぶ必要があります。
配分バランスが崩れていたケース
数年前からiDeCoに取り組んでいたCさん。株価も上がっているし調子がいいようだと考え、お金を投入し続けたまま運用結果を一度も確認せずにほったらかしにしてきた。久しぶりに確認すると、確かに資産は増えていたものの、当初は「高リスク50%、低リスク50%」で運用していたはずが、高リスク商品の価格が上がったことで「高リスク70%、低リスク30%」になり、想定よりハイリスクな運用になっていた。
確定拠出年金では、将来受け取れる金額は自分の運用成果次第です。数年、長ければ数十年に渡って運用し続けることもありますので、途中で適宜様子を見て調整することも大切です。
もしかしたら大きなマイナスが出ているかもしれませんし、Cさんのように当初理想としていた配分バランスが崩れているかもしれません。
バランスを見て調整することを「リバランス」といい、その方法として、今後預けるお金の割り振り方を変更する「配分変更」や今まで積み立ててきた分を売却して預け替える「スイッチング」があります。
自分のお金の行方を把握しよう
確定拠出年金には、自分の大切なお金を預けています。預けた先でどんな風に運用されるのか、運用の結果はどうなっているのか、それは自分や家族の老後生活にも影響する大きな問題です。毎日のように確認する必要はありませんが、「わからない」と放置せず、興味を持って定期的にチェックするようにしたいですね。
自身が過去に「貧困女子」状態でつらい思いをしたことから、お金について猛勉強!銀行・保険・不動産などお金にまつわる業界での勤務を経て、独立。むずかしいと思われて避けられがち、でも大切なお金の話を、ゆるくほぐしてお伝えする仕事をしています。AFP資格保有。