◆長く一緒にいればわかりあえるものでもないと知っている今の60代

離婚については、「ここに至るまでには、長い時間がかかりました」と田中はインスタグラムに記している。だがその後は、何かが吹っ切れたように出演番組で自ら離婚に触れたり、飲食店でばったり知人に会って、「この店、昔パパとよく来たのよ」と、「相手が返しに困るような話をしてしまった」と笑い話にするなど、日々を楽しんでいる様子がうかがえる。

結婚生活が長く、さらに「老いていくこの先」が見えているからこそ、今まで慣れ親しんだ相手と「可もなく不可もなく」穏やかに生きていこうというのが、今までの考え方かもしれない。

だが、今の60代、まだ老い先は長い。残りの30年、あるいはそれ以上を慣れ親しんではいるが「いるとうっとうしい」と感じる相手とは一緒にいたくないと考える女性のほうが多いかもしれない。ひとりでいることは怖くない。ふたりでいるのに孤独だったり、わかりあえなかったりするほうがよほど苦しい。

長く一緒にいればわかりあえるものでもないと、今の60代は知っている。60代は、80年代のバブル前夜、バブル全盛期を20代後半から30代で過ごしてきた世代。若いころに景気のいい時代を味わい、恋愛も自分から選び取ってきた。

いいときだけでなく、悪いときも心のどこかで「どうにかなるさ」とポジティブに考える人も多い。我慢することをよしとせず、自分のために生きることを厭(いと)わない最初の世代かもしれない。