(本記事は、大江加代氏の著書『図解 知識ゼロからはじめるiDeCo(個人型確定拠出年金)の入門書』、ソシム社、年月日刊の中から一部を抜粋・編集しています)

【『知識ゼロからはじめるiDeCoの入門書』シリーズ】
(1)iDeCoは最強の「じぶん専用年金」
(2)iDeCoがもたらす3つの「税金のメリット」
(3)なぜiDeCoの運営コスト面で気にすべきなのは運用管理費なのか?
(4)iDeCo運用に関する注意点 資産運用を行う際の2つのポイントは?
(5)途中では引き出せないiDeCo「運用管理機関変更」2つの注意点は?

※以下、書籍より抜粋

中途一時金 中途引き出しは原則できないと考える

これまで、原則は「どのような理由があっても60歳未満の引き出しはできない(障害給付と死亡給付は除く)」と説明しました。

実は、各運営管理機関のコールセンターにかかってくる電話で、この「中途引き出しができない」ということに関する問い合わせや苦情は多いのだそうです。

そこで、そのあたりのしくみをもう少し正確に説明します。

ゼロではないが現実的に不可能

結論からいうと、やはり引き出すことはできません。

ただし、極めてレアケースに該当するときのみ、「脱退一時金」として受け取れる場合があります。この要件には2つのケースがあります (ただし、1の条件に当てはまる人は、ほとんどいないと思われます)。

脱退一時金を受け取るためには申請手続きが必要です。その場合はコールセンターに連絡し、必要書類を取り寄せて提出します。

脱退一時金の要件

iDeCoにある資産を脱退一時金として受け取れるのは、以下の2つのケースです。

1.以下の1~5の要件をすべて満たす場合に脱退一時金として受け取ることが可能

  1. 国民年金の第1号被保険者のうち、国民年金保険料の全額免除、または一部免除、もしくは納付猶予を受けている人
  2. 障害給付金の受給者ではないこと
  3. 通算拠出期間が1カ月以上3年以下、または個人別管理資産 が25万円以下であること
  4. 加入者の資格喪失日から2年を経過していないこと
  5. 企業型確定拠出年金の資格喪失時に脱退一時金の支給を受けていないこと

2.企業型確定拠出年金の加入者だった人が転職によって加入者でなくなったときに、資産が極めて少額だった場合、以下の1~3の要件をすべて満たせば脱退一時金として受け取ることが可能

  1. 企業型確定拠出年金の加入者、企業型確定拠出年金の運用指図者、iDeCo加入者およびiDeCoの運用指図者でないこと
  2. 資産額が1万5千円以下であること
  3. 最後に当該企業型確定拠出年金加入者の資格を喪失してから6カ月を経過していないこと

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前提として中途引き出しはできない

2016年まではこの脱退一時金の要件は、もう少しゆるやかでした。

iDeCoに加入できる人自体が制限されていたため、積み立てができないと資産が目減りする可能性があったからです。
 
ところが2017年よりiDeCoが原則として誰でも加入できるようになった代わりに、従来に比べて脱退一時金の要件が厳しくなったのです。

そのため、今後も中途引き出しはできないという前提で積立額を考えたほうがよいでしょう。確定拠出年金は無理のない金額で続けていくことが大切なのです。

積み立ての中断や金額変更 中断も可能だが、積み立ての継続が重要

iDeCoでは原則、中途引き出しはできませんが、例えば生活が厳しくなってきたなどの理由で積み立てを中断したり、積立金額を減らしたりすることは可能です。

運用指図者になって一時中断

まず、積み立ての中断ですが、この場合は加入者であることをいったん止めて、「運用指図者」(新たな積み立てをせずにそれまでに積み立てた資産の運用だけを行う人)になります。

つまり、加入者資格を喪失することで、積み立てを一時的に停止させるわけです。
 
手続きの流れは、コールセンターに連絡して「加入者資格喪失届」を取り寄せ、必要事項を記入して返送します。通常であれば、翌月または翌々月から積立額の引き落としがなくなります。

再開するときも書類での手続きになるため、その場合もコールセンターに問い合わせてください。

積立下限額と上限額を知っておく

次に積立金額の変更ですが、積立金額の減額・増額は千円単位で可能です。

この積立金額の変更は、年に1回行うことができます。なお、転職や退職によって積立上限額が変わることにともなう変更については、この年1回にカウントされません。

積立金額の変更の手続きも、まずコールセンターに連絡して「加入者掛金額変更届」を取り寄せ、必要事項を記入して返送すれば手続きは完了です。

もし転職等で掛け金の変更がわかっている場合には、書類を先に取り寄せておくことも可能です。

積み立ては無理のない範囲内で

このように中断も金額変更も行うことができます。ただ、積み立てはできるだけ長い期間にわたって継続してこそ意味があります。

なぜなら、市場は上がることもあれば下がることもありますが、それがいつなのかは誰にもわかりません。

したがって、よいときも悪いときも一定の金額で続けていくことで、はじめて価格変動のリスクを抑えることができるようになるからです。

張り切って最初から大きな金額で積み立てて途中でやめるよりも、まずは少額でもよいので続けていくことが重要だといえます。

運用管理機関の変更 変更は可能だが2つの注意点がある

「自分が加入している運営管理機関のサービスがあまりよくない」「ほかの運営管理機関が提供している商品にさらなる魅力を感じる」

などといった理由で、加入している運営管理機関を変更したいと思う場合があるかもしれません。

いったんすべて現金化される

運営機関の変更自体は可能です。しかし、通常の取引金融機関を変更するのとは訳が違うため、いくつか注意点があります。

まず1つ目は、変更するにあたって、自分が保有している預金や投資信託などは、いったん全部解約され、現金化されてしまうということです。

これは、運営管理機関によって提供している商品が異なるためです。

そして、現金化された資産は新しい運営管理機関へ移ると、その運営管理機関でラインナップされている預金などに、すべていったん入金されます。したがって、自分で運用したい商品に切り替える「商品の入れ替え」を行う必要があります。
 
なお、旧契約先での解約や現金化等の手続きは、あくまで事務的に行われます。

価格が日々変動する投資信託で運用している場合、大きなマーケット変動などで思わぬ損失をこうむる可能性があるからです。事前に自分で売却して預金などに預け変えしておきましょう。

空白の期間が生じる

2つ目は、資産を移す手続きには2~3カ月ほどかかるということです。

つまり、その間は自分の年金資産を運用することができない、いわば空白の期間が生じることになります。仮にその間に株価が上昇したりすることがあった場合、収益の機会を失うことにもなりかねません。

なぜ、変更に2~3カ月もかかるのですか?
iDeCoの場合、運営管理機関である金融機関とのやり取りだけではなく、国民年金基金連合会や資産を管理している信託銀行ともやり取りすることになります。

現在、このやり取りのほとんどを紙(書類)で行うしくみのため、時間がかかることが最大の原因です。改善すべき課題といえます。

(画像=Webサイトより ※クリックするとAmazonに飛びます)

著作者:大江加代
確定拠出年金アナリスト、オフィス・リベルタス取締役、年金学会会員。野村證券に22年間勤務。株式会社オフィス・リベルタスの取締役を務める。ウェブサイト「iDeCoナビ」をNPO法人確定拠出年金教育協会の理事として立ち上げる

監修:大江英樹
経済コラムニスト。大手証券会社で定年まで勤めた後に独立。シニアライフ、行動経済学、確定拠出年金、資産運用等をテーマとして執筆や講演活動を行っている。厚生労働省社会保障審議会企業年金部会の「確定拠出年金の運用に関する専門委員会」の委員を務める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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