(本記事は、大江加代氏の著書『図解 知識ゼロからはじめるiDeCo(個人型確定拠出年金)の入門書』、ソシム社、年月日刊の中から一部を抜粋・編集しています)
【『知識ゼロからはじめるiDeCoの入門書』シリーズ】
(1)iDeCoは最強の「じぶん専用年金」
(2)iDeCoがもたらす3つの「税金のメリット」
(3)なぜiDeCoの運営コスト面で気にすべきなのは運用管理費なのか?
(4)iDeCo運用に関する注意点 資産運用を行う際の2つのポイントは?
※以下、書籍より抜粋
分散投資の考え方1 長期の運用では幅広く分散投資する
集中投資なら大儲けも可能?
ビジネスではしばしば「選択と集中が大切」といわれます。
ビジネスも資産運用も利益を追求するという意味では同じです。すると、iDeCoも1つの商品に資金を集中させたほうがよさそうにも思えます。
値上がりするものがわかれば、分散投資よりも集中投資のほうが儲かるのは明白です。ただ問題は、どれがいちばん値上がりするかは誰にもわからないということです。
もちろん時間と一定の知識を持っていて投資する企業を個別にじっくりと調べられるなら、集中投資で大きな利益をあげることも可能でしょう。
実際、世界一の投資家といわれるウォーレン・バフェット氏はそうして巨万の富を築き上げました。
長期の運用では特に分散投資が重要
しかし一般の多くの人には、そのような時間も豊富な知識もありません。
特にiDeCoのように20年とか30年という長い期間運用することを考えた場合、どんな企業や産業が成長するか、あるいはどの国や地域が発展していくかを読み取るのは極めて難しいことです。
つまり、そのような状況で投資をするのであれば、幅広く分散投資をしておくことが必然的に適切な選択になってくるのです。ただ、分散さえしておけばよいかというとそういうわけでもありません。
分散投資にもルールと方法があります。
ウォーレン・バフェット
アメリカの投資家、経営者、慈善事業家。世界最大の投資会社バークシャー・ハザウェイの筆頭株主にして経営者。
この会社の株価は1965年から2015年までの50年間で2万倍になっており、彼自身の個人資産も約9兆円といわれています。
分散投資の考え方2 理論的に正しい分散投資の方法
値動きの異なる商品を組み合わせる
理論的に正しい分散投資のやり方は、値動きの性質の異なる商品に分散することです。
国内の株式に投資するなら、為替が円高になると利益が出る企業と、反対に円安になれば利益が出る企業を組み合わせておけば、どちらに転んでも大きな損失にはならず、リスクを軽減することが可能です。
日本の企業に投資するという前提で考えた場合はこのような分散投資の方法もあります。
「地球全体を買う」
ただし、日本の企業に投資するだけでは十分とはいえません。
日本の株式市場は、多少の上下はあったものの、過去20年以上にわたって低迷が続きました。その間のアメリカ経済の拡大や中国の発展を見ると、日本にだけ投資していたことは決して正解だったとはいえません。
今後どの市場が拡大・発展していくのかを予測するのは難しいことです。だとすれば、「地球全体を買えばよい」のです。
市場規模の割合で投資する
具体的にいえば、世界中の国の経済規模や市場規模に合わせて分散投資すればよいのです。
現時点での市場規模の割合で考えてみましょう。
例えば株式の時価総額の割合でいえば、日本が約8%、日本以外の先進国が約83%、新興国が約9%程度となります。iDeCoの場合であれば、前述の割合にそれぞれの資産に投資する投資信託を組み合わせたり、市場規模に合わせてすでに組み合わせされたバランス型に投資したりすればよいということになります。
筆者は長期の資産形成において、市場規模の割合に合わせて投資するのは論理的に正しい方法だと考えます。
具体的にはどうすれば「地球全体」が買えるの?
iDeCoでは、国別の投資信託というのはあまりありません。
そこで、日本株式、日本以外の先進国株式、そして新興国株式というカテゴリーに投資する投資信託はありますから、それぞれに一定の割合で分散投資すればよいのです。
分散投資の参考例 自分に適した資産配分
iDeCoの運用でまず考えるべきは、自分のリスク許容度に合わせて資産配分を決めることでしたが、最後に資産配分の例をいくつか紹介します。
市場規模型
市場や経済の規模に合わせてグローバルに分散投資することです。シンプルに経済規模に合わせてグローバルな株式投資で配分を決めるのが、筆者はもっとも合理的な分散投資の手法だと考えています。
均等配分型
基本的な4つのカテゴリーである国内株式、国内債券、外国株式、外国債券を単純に25%ずつに分けて配分する手法です。わかりやすいのですが、これがよいという合理的な理由は特にありません。
なお多くの運営管理機関のウェブサイトや投資教育用のテキストには、この配分例が載っています。
公的年金型
公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政 法人(GPIF)が実際に運用している配分例です。
私たちが将来受け取る厚生年金や国民年金もこのような配分で運用されています。国の年金のために国民のお金を預かり、運用益をあげようとするプロにならって自分の年金も運用するという手法です。
3つの配分例を紹介しましたが、「どれかが正解」ではありませんし、「どれがいちばん運用益があがる」かはわかりません。
大切なのは、自分で考えて決定し、iDeCoを通じて自分に適した資産配分を見つけることなのです。
この3つの手法のどれがよいの?
将来的にどれがいちばん儲かるかなどというのは誰もわかりません。
それぞれの配分例にはそれぞれの考え方が込められています。
それをあなた自身が考えて、納得できる配分を決めことがもっとも大切なことなのです。これが運用の第一歩。途中で変更もできますからまずは一歩踏み出してみましょう。
運用に関する注意点 資産運用を行う際の2つのポイント
iDeCoの運用に関して、気をつけるべきポイントを2つほどお伝えしておきます。
この2つのポイントは、資産運用を行う際の基本的な考え方でもあります。
分散投資は「自分のお金」全体で考える
まず1つ目は、「分散投資」についてです。
本来、分散投資は「自分のお金」全体で考えなければなりません。
iDeCoの中だけで分散投資をしても、実はあまり意味がないのです。
少し具体的に説明すると、仮に自分がiDeCo以外には預金しか行っていない場合、iDeCoは全部株式投資信託にしてもよいでしょう。金融資産 が全部株で預金がまったくないという場合であれば(そういう人は少数でしょうが)、iDeCoは全部定期預金にしてもよいと思います。
要は、自分のお金全体での分散投資を心がけるべきなのです。
元本確保型との向き合い方
2つ目は、もし預金や保険といった元本確保型商品で運用を考えるときについてです。
現在のような低金利のときはできるだけ短い期間のものにしたほうがよいでしょう。
定期預金なら5年や10年の商品は避けて1年のものを選んでください。
保険は、将来金利が上がって中途解約すると元本割れしてしまう可能性が大きいため、低金利の時期にはあまり賢い選択肢とはいえません。
著作者:大江加代
確定拠出年金アナリスト、オフィス・リベルタス取締役、年金学会会員。野村證券に22年間勤務。株式会社オフィス・リベルタスの取締役を務める。ウェブサイト「iDeCoナビ」をNPO法人確定拠出年金教育協会の理事として立ち上げる
監修:大江英樹
経済コラムニスト。大手証券会社で定年まで勤めた後に独立。シニアライフ、行動経済学、確定拠出年金、資産運用等をテーマとして執筆や講演活動を行っている。厚生労働省社会保障審議会企業年金部会の「確定拠出年金の運用に関する専門委員会」の委員を務める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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