◆それは「性教育」ではなかった
「その最中に、彼らの担任である若い男性の先生が入ってきました。学校に届いたアンケートに答えてほしいとのことで、その内容が性教育について。生徒たちは真面目に書き込んでいたのですが、彼が突然『じゃあ、ここから性教育をはじめるぞ』と言い出して。教科書的な内容なら私も気にしなかったでしょうけど、若い先生だからなのか、言葉が露骨というか卑猥というか……」
ミユキさんはここで言葉を切った。聞くに堪えない内容だったのだろう。それを耳に入れる心の準備もできていなかった。耐えきれなくなったミユキさんは図書室を出る。しかし、どこに行けばいいかわからない。学校図書館司書は、職員室に席がなかった。
保健室には、具合の悪い生徒がいるはず……「私の居場所、ないんだ」と立ちすくむミユキさんの前に、たまたま女性教諭が通りがかった。いま起きたことを話すとすぐに、ミユキさんの早退の準備を整えてくれた。
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