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今年大注目のアクション映画が、5月31日(金)についに日本公開となる。『マッドマックス:フュリオサ』だ。「マッドマックス」シリーズ5作目にして、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』の人気キャラクター、フュリオサの過去を描く前日譚スピンオフである今作について、今回はネタバレなしで魅力を紹介する。
映画『マッドマックス:フュリオサ』レビュー
『マッドマックス:フュリオサ』
『マッドマックス:フュリオサ』あらすじ
世界崩壊から45年。バイカー軍団に連れ去られ、故郷や家族、人生のすべてを奪われた若きフュリオサ。改造バイクで絶叫するディメンタス将軍と、鉄壁の要塞を牛耳るイモータン・ジョーが覇権を争うMADな世界〈マッドワールド〉と対峙する!怒りの戦士フュリオサよ、復讐のエンジンを鳴らせ!(公式HPより)
アニャ・テイラー=ジョイを讃えよ!!
アニャ・テイラー=ジョイの経歴にも注目!
今回の主演俳優、アニャ・テイラー=ジョイ。
Netflixシリーズ「クイーンズ・ギャンビット」やエドガー・ライト監督の『ラストナイト・イン・ソーホー』で大々的にメジャーシーンに頭角を表す前から、テイラー=ジョイの存在感や唯一無二のオーラに惹かれている映画ファンは多かった。
デビュー作『ウィッチ』(’15)からその大きな目と透き通った美貌、少ない言葉数ながら佇まいで訴えかける演技、狂気的な変化を見せつけた彼女は、『スプリット』『サラブレッド』『ザ・メニュー』といった作品でもその演技力と存在感を証明してきた。昨年の大ヒット作『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』でもピーチ姫役に抜てきされ、声だけでも印象を残せることを示している(※)。
※実はピーチ姫役以前に『プレイモービル』で声優経験はある。
そんなアニャ・テイラー=ジョイが今回演じたのは、世界的な大ヒットを記録した『マッドマックス 怒りのデス・ロード』でシャーリーズ・セロンが圧倒的なインパクトを残した“フュリオサ”だ。
表情が読めない役こそ、アニャの眼力の見せ所!
筆者がテイラー=ジョイのファンだという贔屓目なしにも、彼女の“フュリオサっぷり”はすばらしかった。前作のシャーリーズ・セロンによる演技を敢えてそこまで意識しなかったことについて語っていた彼女だが、その演技には“フュリオサの魂”が自然と根付いているように見えた。
口数も少なく、顔も黒塗りされたり布で隠れたりと表情が読み取りづらい今回のフュリオサ役。テイラー=ジョイにはかなりのプレッシャーもあったと想像できるが、彼女は持ち前のハッキリした目を活かし、“目と佇まい”だけでその感情を訴えかけた。
ミラー監督と親交のあるエドガー・ライト(※)が彼女を強く推薦したという話もあるが、目が重要な役割を持つという意味でも、そのキャスティングは大正解だったのではないか。
※監督作『ラストナイト・イン・ソーホー』でアニャ・テイラー=ジョイを主演に起用した。
クリス・ヘムズワースが悪役を完遂!
クリス・ヘムズワースといえば善玉だったが…?
そしてもうひとりのキーパーソンが、フュリオサを幼少期に誘拐したバイカー集団のヘッド、ディメンタス将軍だ。過去に抱えた闇と、ミステリアスな狂気をにじませる印象的なキャラクターを演じたのは、クリス・ヘムズワースだ。
ヘムズワースといえばMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)の雷神ソー役や、Netflix映画『タイラー・レイク』での主演など、ヒーロー(善玉)役のイメージが強かったが、今回のディメンタス役ではそのイメージを飛び越え、悪役も演じられることを証明した。
絶望の末に狂気的(MAD)になり、どこか諦めたような“カリスマ道化”っぷりは『アベンジャーズ/エンドゲーム』(’19)における「太ったソー」を彷彿とさせ、同作の頃からヘムズワースには“闇堕ち”で魅せる才覚を証明していたことを振り返らされる。
見せずとも、演技で味わわせる“過去の闇”
「太ったソー」とディメンタスに共通するのは、“クレイジーだがどこか愛おしい”・“困らせられるが憎めない”といった点。逆にソーと異なるのは、ディメンタスが抱える過去の闇を観客は目撃できないということだ。
ソーの時は、ソーが大切な物を次々に失い、心が壊れてしまう経緯を観客は長年かけて見守ってきた。しかし今回のディメンタスは最初からクレイジーな悪役として登場しており、本来ならフュリオサ視点に立った観客が憎むべきキャラクターでしかないのだ。
しかし、彼が何やら暗い過去を持っていることは序盤から明かされ、そのクレイジーな振る舞いの裏にある“哀愁”は常にヘムズワースの演技からにじみ出る。彼の演技がディメンタス将軍というキャラクターに多層的な魅力を持たせ、“愛すべきヴィラン(悪役)”にまで昇華していたのだ。
予定調和性さえもエモーショナル
今作は『マッドマックス 怒りのデス・ロード』の“前日譚”だ。ということは、“今作でキーパーソンなのに『怒りのデス・ロード』に登場しないキャラクター”には“何かが起きる”ことをあらかじめ観客は想像しながら観ることになる。しかし、想像できたとしても、というより想像できるからこそ、観客は画面にのめり込み、エモーショナルな気分にさせられるだろう。
何かが起きると思いながら見させられる、その予定調和性さえもエモーショナルに作用させる様は、『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』を思い出させる。
“超理想的”なスピンオフ!
スピンオフ作品に求める理想は?
今作はマックスではなくフュリオサが主人公の、いわゆる“スピンオフ作品”だ。スピンオフ作品はいつでも、期待と不安を持って迎えられる。
“よくないスピンオフ作品”を想像すると、元の作品のファンを楽しませられない作品が多い。元の作品にあまりに関係がなかったり、元々の物語をないがしろにしていたり、世界観を崩してしまったりすると、“スピンオフ作品”としては魅力に欠けてしまう。
では“理想的なスピンオフ”は、その反対になる。“モロ被り”しない程度に元の作品と関連し、元々の物語を大切にし、世界観の魅力を再び味わわせられる作品が“理想的なスピンオフ”といえるのではないか。
今作は、理想的なんてものではない。そのハードルを超えていく“超理想的”なスピンオフだったように思う。ジョージ・ミラー監督は、自身が手がけたこれまでのシリーズを大切にするのはもちろん、観客が「今作をどう楽しみたいか」も心から理解していた。
超理想的なスピンオフ作品
まず、今作はしっかり「マッドマックス」シリーズと地続きの物語になっている。映画冒頭から時代背景も示され、シリーズにおける今作の立ち位置をファンはしっかり掴める構造になっている。
さらにミラー監督自身が手がけるからこそ、フュリオサを形成する過程を描くにあたって元々『怒りのデス・ロード』で描かれたフュリオサの物語は確実に尊重され、フュリオサへの愛を感じる1作となっている。
そして、世界観の扱いが非常に嬉しい。前作に言葉だけ登場した要素のヴィジュアライズ(視覚化)、世界観を崩さずに作られた新たな戦闘用車両たち、イモータン・ジョーが牛耳る砦の内情などなど、“世界観を崩さない”どころか拡大・拡充を行ってくれるため、シリーズのほかの作品を改めてもう一度観たくなってしまうのだ。
そんな今作はまさに“最初から最後まで”シリーズのファンを興奮させる超理想的なスピンオフであった。
初心者でも大興奮できるアクション映画
初心者でも楽しめる!
もちろん今作、スピンオフ作品として魅力的なだけではない。シリーズを知らない初心者が突然今作だけ観ても確実に楽しめるアクション映画だ。
筆者はシリーズを知っているが、「知らなくて今作だけ観たら?」と想像しても、特に“わかりにくい点”はない。もちろん“知っていた方がわかりやすい・興奮できる点”はあるが、知らないから理解不能になるような部分はないため、「シリーズを観ている暇はない!でも注目されてるし観に行きたい!」という方はぜひ今作だけでも観ていただき、その世界観が好きになったらシリーズを観るという流れでも大丈夫だ。
大迫力のアクション!
もちろんシリーズファンが期待するのは大迫力で唯一無二のアクション。
今作でも、「マッドマックス」シリーズならではの特殊な車による戦いや、激しい銃撃戦・爆発の迫力を楽しむことができる。エンジン音が響く中で、砂と汚れにまみれた泥臭いサバイバルバトルが繰り広げられる様はやはり圧巻だ。
レビューまとめ
アニャ・テイラー=ジョイの“目の演技”と、クリス・ヘムズワースの哀愁クレイジーな悪役に彩られた、ジョージ・ミラー監督自身による超理想的な前日譚スピンオフ『マッドマックス:フュリオサ』は、シリーズのファンも初心者も楽しめる圧巻のアクションと演技で見せる今年トップクラスの注目作。ぜひ劇場でこの迫力と演技、圧巻のMAD MAXを浴びていただきたい。
『マッドマックス:フュリオサ』は5月31日(金)ついに日本公開。
作品情報
監督:ジョージ・ミラー
出演:アニャ・テイラー=ジョイ、クリス・ヘムズワース
配給:ワーナー・ブラザース映画