現役ケアマネージャー“ケアマ姐さん”に聞く、親の介護相談室(2)足を痛めた親のために手すりをつけても「介護保険制度」を利用できないケースがある

相談者:Kさん(40代・会社員)

ケアマ姐さん:某地方都市にて、学校を卒業してから約30年間、介護職に従事し続けてきたプロ。2006年の介護保険制度の改正主任ケアマネージャーの資格を取得。利用者のケアプランを作成するほか、ケアマネージャーを管理や指導も行う。モットーは、介護を受ける本人だけでなくご家族の方との信頼関係も築くこと。

・「介護保険制度」を利用するには事前の申請がマスト

Kさん:高齢の親が足腰が弱くなり、外出では車椅子を利用するようになり、介護認定の申請を検討しているところです。両親の家をバリアフリーにしたいのですが「介護保険制度」というのが利用できると聞きました。どのくらいの範囲で補助してもらえるのですか?

ケアマ姐さん:「介護保険サービス」には介護給付でのサービスと予防給付でのサービスという2つのサービスがあり、介護給付でのサービスに住宅改修が含まれています。具体的には、住宅改修費の支給限度基準額は、原則同一住宅で20万円。福祉用具購入費の支給限度基準額は年度で10万円で、限度額の範囲で何度でも利用が可能です。ただ、制度はとても流動的で数年ごとに見直しもあるため、必要になったときに担当するケアマネージャーさんに相談することをおすすめします。 ※2024年5月現在

Kさん:なるほど!では、早速バリアフリーの工事を進めたいと思います。

ケアマ姐さん:それはお待ちください!介護保険制度を利用するには“先に申請が必要”になります。申請が降りる前に施工会社との契約を交わしてしまったり、すでに工事済みのものについては介護保険制度の適用外になるので注意が必要です。実際、制度のことを知らずに家中に手すりをつけてしまい、補助を受けられなかったという例もありました。

Kさん:それは危なかった!事前に申請が必要なんですね。

ケアマ姐さん:はい、というのも補助を受けるには許可が必要だからです。介護を必要としている人の日常生活を支えるための補助なので、本人が使ってない場所の改修工事となると対象外になります。例えば、本人は利用できないのに階段に手すりをつけたり、本人が日常的に使用していない部屋の段差をなくしたりといった改修工事はNGです。

・20万円を超える改修費用は自己負担に?

Kさん:ちなみに、20万を超える場合、それ以上は自己負担ということでしょうか?

ケアマ姐さん:住宅改修工事に関してはそうですね。ただ、補助で賄えない部分に関しては、修繕工事ではなくレンタル品を利用するなどで補うことも可能です。例えば、手すりにもレンタル品があるんですよ。悩んだら、ケアマネージャーさんに相談してみてください。いいプランを提案してくれるはずです。

また、もう1つ覚えていてほしいのが、無事に申請も下りて工事がスタートした場合でも、工事が終了する前に利用者さんが亡くなったり、入院して利用しないことになると、予定していた補助を受けられず全額負担に。ですから、ケアマネージャーは利用者さんの様子もみながら、入院の可能性が出てきた場合に工事をストップする場合もあるんです。

臨機応変に対応できる制度ならいいのですが、さまざまなケースが考えられる中で現状は難しいところなので、ぜひ頭に入れておいてください。

Kさん:わかりました!制度を正しく利用するために、素人判断ではなく、きちんとケアマネージャーさんのアドバイスに基づいて進めることにします。

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