神戸市の白鶴酒造資料館は、酒蔵として使われていた建物で、日本酒造りについて学べる施設です。入館は無料で、見学後は日本酒の試飲をしたり、お土産を買うこともできます。すべて屋内で楽しめるので、雨の日の観光にもおすすめです。

酒どころ灘にある「白鶴酒造資料館」

白鶴酒造資料館は、兵庫県神戸市の大手日本酒メーカー「白鶴酒造」が運営する、お酒の資料館です。昭和の時代まで酒蔵として使われていた木造の建物で、昔ながらの日本酒造りについて学んだり、酒造りの道具を見学したりできます。

酒蔵のある一帯は、灘(なだ)と呼ばれる古くからの酒どころです。灘とは、神戸市東部の灘区、東灘区や、東の西宮市までの沿岸部を指しており、六甲山系の豊かな水、気候が、酒造りに適していました。今でも大小の酒蔵が点在しており、酒蔵めぐりを楽しむ観光客の姿も見られます。

大正時代の酒蔵で酒造りの道具を見学しよう

白鶴酒造資料館の入口。樽が並び、本店一号蔵であったことを示す札がかかる。

最寄りの阪神電車「住吉」駅から5分ほど歩くと、資料館に到着します。こちらは白鶴酒造本社の敷地内にあり、大きな建物が立ち並んでいますが、資料館は右手にある木造の建物です。入口には酒樽が並んでおり、酒蔵に来たという気分にさせてくれます。入館は無料なので、さっそく入り、順路の案内に従って見学しましょう。

等身大の人形や道具で酒造りを解説

施設内では、昔の酒造りの工程を、等身大の人形と道具を使い、説明しています。日本酒の醸造にはいくつもの工程がありますが、まずは精米した米を洗い、蒸すことから始まります。その後、米を冷やしたら、用途ごとに分け、日本酒醸造に欠かせない麹、もとを作っていきます。

こちらは、酛摺り(もとすり)と呼ばれる工程です。半切り桶に入った酒母(しゅぼ)をすりつぶしています。酒母は、日本酒のアルコール発酵をになう重要なもので、酛(もと)とも呼ばれています。

最初は3人で、その後は2人1組で行う作業で、時間やタイミングを合わせるための唄を歌いながら行っていたそうです。

現在では機械化、自動化が進んでいる日本酒造りですが、展示を見ると、昔はどれも手作業で、さまざまな酒造用道具を使っていたことが分かります。このように小さな道具もありますが、貯蔵用の樽などはとても大きく、さすが大手酒造メーカーだなと感じさせるものです。

独自の酒米「白鶴錦」

白鶴オリジナルの酒米の特徴についても解説されています。酒米は、私たちが普段ご飯として食べている食用米よりも、日本酒造りに適しているお米です。特に優れた品種として、山田錦(やまだにしき)が知られていますが、白鶴では、さらに良い酒米を作ることを目指しました。

そうして選び出されたものは、白鶴錦と命名されました。品種登録も受理され、今では白鶴だけでなく、他の酒造会社へも提供されているそうです。資料館には、この白鶴錦の稲わらを使った畳が展示されており、自由に座ることもできます。

筆者は日本酒が好きで、知識も少しはある方だと思っていましたが、白鶴独自の酒米があることは知らなかったため、良い勉強になりました。

1階には、展示以外に映写ホールがあり、白鶴の酒造りの歴史などを、映像で紹介しています。お時間のある方は、こちらも見てみてください。

酒蔵として使われていた建物にも注目

酒造りの道具や工程だけではなく、大正初期建造の建物もじっくり見たいものです。2階に上がると、太い柱や梁で、建物を支えているのが分かります。歴史を感じますが、昭和40年代中頃までは、実際に日本酒醸造に使われていたそうで、状態も良く、頼もしい感じがします。

こちらの蔵が使われていた当時の製造能力は、アルコール度数20%の原酒で、約900キロリットルだそうです。これは、一升瓶(1,800ml)換算で、約60万本にもなります。

道具を見学しながらフロアを歩くと、ミシミシと床がきしむ音が聞こえてきます。近年の建物では、そのようなことがないので、貴重な体験かもしれませんね。