ギャラリー外観

神奈川県鎌倉市にあるギャラリー「Quadrivium Ostium(クアドリヴィウム・オスティウム)」では、5月16日(木)~28日(火)の期間、越中正人氏による個展「剥製 パラダイム」を開催。

また、5月19日(日)には、トークショーとレセプション・パーティーも開催する。

越中正人氏について

越中正人氏は、これまで「集合(集団)」と「個(個人)」の関係性に注目し、偶然または必然によって集まった「個」の集合の中においての存在意義や相互作用について、人・花・火星など、さまざまな素材を用いた写真と映像を制作してきた。

2007年に発表したシリーズ「echos」は、「USB Young Art Award」を受賞し。以降は、越後妻有アートトリエンナーレ(新潟)、WROメディアアートビエンナーレ(ポーランド)などの国際展に参加するなど、活躍の場を広げている。

個展「剥製 パラダイム」の見どころ

剥製は、生命を奪われた生命体として「不在」でありながら、人間の「剥製を所有する」という風習やステイタスとしてのパラダイムにより加工を施され存在するという歪みを孕んでいる。

しかし、時代とともに剥製文化が衰退し、そのパラダイムが終焉を迎え「剥製を処分する」という現実に対峙することで、見失われている人間本来の根源的な要素が顕にされる。


個展「剥製 パラダイム」での展示作品は、2枚の写真で構成される。

1枚は、白い壁に向かい合わせて剥製を置き撮影したもの、もう1枚は剥製はそのままの位置でプロジェクターで海の風景を映して撮影したものだ。


亡き存在としての剥製の「実像」と、海に向かって佇むという意思を感じさせることで「見立ての生命」を与えた「虚像」とを平行に見せることで、剥製が担っていたひとつのパラダイムが終焉したその先の、言語化できないエクリチュールを体感する「劇場」として作用するという。

なお、同展では、作品の販売も行われる。

越中正人氏が語る個展「剥製 パラダイム」

越中正人氏は、自身の祖父の家を解体する際に見つかった剥製の行方を考えることからこの写真シリーズを開始。

同氏は個展「剥製 パラダイム」にて、全国から集めた剥製を通じて、時代と共に変わりゆく「価値」と「存在」について探求することを目指している。


プロジェクターを用いて海を背景にした剥製は、まるで生きているかのように海を見つめる姿を写し出す。しかし、光が消えれば、それはただの剥製に戻る。この2つの状態を対比させることで、時間の経過とともに変化する心情を表現し、観る者にありもしないドラマを想起させている。

同氏は、「この展覧会は日本の伝統的な感覚と現代社会の価値観が交錯する場になります」と語った。