また保輔は沙汰を待つ間、獄中で切腹自殺するという奇怪な最期を遂げました。本当は口封じのためでしょうが、保輔は盗賊・袴垂を逮捕した藤原保昌にとっては実弟ということもあって、正義心に燃える兄が愚弟を説得し、不名誉な余罪が暴かれる前に服毒自殺させたという説もありますね。

 さて「公卿」という身分についても解説しておきます。前回のドラマでは、藤原実資(秋山竜次さん)が「私を公卿にしておけば……」と延々とグチっており、奥方から「それ、日記に書けばよろしいのではないですか」といわれても「書かぬ!」というやりとりを例のごとく繰り返していましたよね。

 現代日本では「公家」と「公卿」、それから「貴族」は、同じような意味でしか捉えられていませんが、朝廷に仕える役人たちの中で「貴族」と呼ばれるには、五位以上(正確には従五位下の官位より以上)の官位が必要でした。つまり、朝廷に仕える役人だから貴族というわけではないのです。

 官位が六位から五位に上がると、待遇も一気に良くなりました。当時の朝廷で「貴族」とされる役人はだいたい500人程度ですが、その中でも官位が三位以上、つまり最高位の「貴族」にあたるのが「公卿」はわずかに20人ほど。現代日本でいえば、◯◯大臣など閣僚クラスに相当したのです。