◆ 連続殺人を犯した介護士の主人公に思うこと

――斯波(しば)にはどんな印象を持ちましたか?

斯波の悲しさ。この大きな問題を何らかの形で世に
『ロストケア』より
松山「(斯波がかつて父親を)介護をしていたとき誰も頼る人がいなくて、誰かに頼ろうと思って役所に行ったんだけど、『これでは受けられない』と言って拒否された。それで孤立していった。これってすごく悲しいことだなと思いました。今、日本はこんなに平和だとみんなが振舞っていて、何不自由なく生活しているように見えてますけど、中にはこうして助けてくれと言っても誰にも助けてもらえられないような部分がある。自分は知らなかっただけなんだと感じました。

 斯波は普通の人だし、一般的な人。違いがあるとしたら何があるんだろうと。これってすごく悲しいことだなと、すごく刺さって。この大きな問題を何らかの形で世に出すことは、インパクトがあるんじゃないかと思ったんです」

家庭を持った今、死ねない理由が強烈にある
『ロストケア』より
――後半になるにつれ、斯波と大友検事(長澤)のやりとりは、観る側への問いかけに見えてきます。

松山「原作からも、ふたりは検事と殺人犯というだけでなく、日本が、これからどうやってどういう未来を描いていくのかという、未来の話をしているように、僕は感じていました。次の世代に、自分たちがどう死んでいくのかを真剣に語っていると、僕は原作から感じたので、そこは映画でもやりたいところでした」