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テイラー・スウィフト11枚目のフルアルバム「The Tortured Poets Department」および同アルバムに15曲を追加した「〜:The Anthology」が4月19日(金)にリリースされた。

今回はアルバムの中から6曲目「But Daddy I Love Him」(バット・ダディ・アイ・ラヴ・ヒム)に注目し、意訳・分析してみる。

テイラー・スウィフト「But Daddy I Love Him」リリック・ビデオ

テイラー・スウィフト「But Daddy I Love Him」意訳

I forget how the West was won
I forget if this was ever fun
I just learned these people only raise you
To cage you
Sarahs and Hannahs in their Sunday best
Clutchin’ their pearls, sighing, “What a mess”
I just learned these people try and save you
‘Cause they hate you

西部がどのように征服されたかは覚えていない。
楽しかった頃も覚えてないよ。
わかったよ。“この人たちは、ケージに閉じ込めるために人を育てるんだ”って。
サラたちもハンナたちもよそ行きの服を着て、
『なんてこと』なんてため息ついて大げさに反応してさ。
わかったよ。“この人たちは相手を嫌いだから、その相手を守ろうとするんだ”って。

Too high a horse for a simple girl
To rise above it
They slammed the door on my whole world
The one thing I wanted

ただの女の子には背の高すぎる馬に乗り、それを超えていく。
彼らは私のすべての世界の扉を乱暴に閉めた。
それは私が望んでいたものなのに。

※1
Now I’m runnin’ with my dress unbuttoned
Scrеamin’, “But, Daddy, I love him
I’m havin’ his baby”
No, I’m not, but you should see your faces
I’m tellin’ him to floor it through thе fences
No, I’m not coming to my senses
I know he’s crazy, but he’s the one I want

今私は走っている。ドレスのボタンが外れたまま、叫びながら。
「でもパパ、私は彼を愛してるの」
「私は彼の赤ちゃんを身籠ってるの…いや身籠ってないよ、すごい表情するね」
打ちひしがれながら、フェンス越しに彼に伝える。
別に私は正気ではないよ。
彼が狂ってるのなんてわかってる。でも彼こそ私が望むものなの

Dutiful daughter, all my plans were laid
Tendrils tucked into a woven braid
Growin’ up precocious sometimes means
Not growin’ up at all
He was chaos, he was revelry
Bedroom eyes like a remedy
Soon enough, the elders had convened
Down at the city hall

従順な娘、私の計画はすべて葬られた。
編み込まれて、飲み込まれていった。
早々に成長するということは、全く成長しないことを意味することもある。
彼はカオスだった。彼はお祭り騒ぎだった。
寝室で見る彼の目は、治療薬のようだった。
年長者たちは早々に、公民館に集まった。

“Stay away from her”
The saboteurs protested too much
Lord knows the words we never heard
Just screeching tires and true love

「彼女から離れて」
過激な活動家たちは大袈裟に抗議した。
神のみぞ知る、私たちに聞こえなかった言葉。
それはただの擦れるタイヤの音と、真実の愛。

※1 繰り返し

I’ll tell you something right now
I’d rather burn my whole life down
Than listen to one more second of all this bitchin’ and moanin’
I’ll tell you something ‘bout my good name
It’s mine alone to disgrace
I don’t cater to all these vipers dressed in empath’s clothing

今あなたに言っておくことがある。
その不平不満を聞く暇が1秒でもあるなら、私は自分の人生を一から焼き払った方がまだマシ。
私の名誉について言っておくことがある。
不名誉もあわせて全部、私だけのもの。
共感者の皮を被った毒蛇どもに与えるものなんかない。

God save the most judgmental creeps
Who say they want what’s best for me
Sanctimoniously performing soliloquies I’ll never see
Thinkin’ it can change the beat
Of my heart when he touches me
And counteract the chemistry
And undo the destiny
You ain’t gotta pray for me
Me and my wild boy and all of this wild joy
If all you want is gray for me
Then it’s just white noise, and it’s just my choice

神は「私にとっての最善」を求める最も偉そうで不快な人々を救う。
そんな神聖ぶったひとり語り、これまで見たこともないよ。
彼が私に触れたとき、私の心臓の鼓動が変わることを思い出す。
そして化学反応を打ち消し、運命をなかったことにする。
あなたは私のために祈らなくていいよ。
私、私のワイルドな彼、すべてのワイルドな楽しみのために祈らなくていい。
あなたが私に望むものは全部灰色なんだよ。
もうそれはただのホワイトノイズ。選ぶ権利は私にある。


この曲には、元恋人マシュー・ヒーリー(THE 1975)との恋愛に対するファンからの非難にうんざりしたテイラーの本音が詰まっているのではないか。

「パパ」を父親ではなく、保護者ぶってテイラーの恋愛に口出ししてくる一部のお節介なファンだと解釈すると、この曲の意図がクリアに見えてくるように思える。

「ケージに閉じ込めるために人を育てるんだ」「相手のことを嫌いだから、相手のことを守ろうとするんだ」といった部分は、そのような一部のファンに生じている矛盾を皮肉ったもの。本来、大切に育てたものを檻に閉じ込めていては本末転倒だし、好きな相手の幸せを邪魔する行為には大きな矛盾が存在する。

大スターの恋人が世間的に“問題児”とされる人物であったとして、その交際を邪魔する権利は誰にもない。「別に私は正気ではないよ。彼が狂ってるのなんてわかってる。でも彼こそ私が望むものなの」。この部分こそがすべてではないだろうか。変だと言われようと、愛したい相手を愛する自由は本人だけに与えられた権利。テイラーは正義感を振りかざした保護者気取りの口出しにはうんざりしているようだ。

トラヴィス・ケルシーと順調な交際を続けるテイラーが、現在もこの楽曲のように「ワイルド」で「カオス」なマシューへの思いを持ち続けているのかは不明だが、少なくとも当時の彼女が抱えていたフラストレーションはこの楽曲に集約されていると考えられるだろう。