■どんどん飲み込みましょう。

 小説のネタ探しのために事件現場に介入したくてしょうがないミコさんは、森野につきまとうことにしたようです。

 そんなミコさんが偶然訪れたカラオケボックスで、偶然、森野も1人カラオケをしていました。そのカラオケ屋で偶然、人気YouTuberが生配信をしていて、その日その時間に偶然、殺人事件が起こる。ミコさんにとっては願ってもない機会が訪れるわけです。

 偶然が過ぎるだろうと思いますが、主人公が偶然、事件に遭遇するのはミステリーとして仕方のないところなので、このへんもどんどん飲み込んでいきます。

 今回は、2人組のYouTuberの片方が生配信中に相方を殺したという事件。「生配信中」という完璧なアリバイをどう崩すかがキーになります。

 ところで、『イップス』は倒叙を選択しています。視聴者に犯人を推理させるのではなく、先に犯人を明かしておいて、その謎を主人公が解いていくというスタイルです。この場合、「犯人は誰なの?」というミステリーとしての楽しみをひとつ放棄しているわけですから、謎解きには相応の楽しみを用意しなければなりません。「犯人が誰だかわかっていてもおもしろいミステリー」は、普通の犯人がわからないミステリーよりも謎解きがおもしろくなければ、倒叙を採用した意味がないのです。