そう見えるのは、おぼろげにわかってきた過去の自分に対して、まことがちゃんと腹を立てているからです。人間関係を適当に流してきたこと、好きな服を着ないで目立たないようにしていたこと、つまりは「しょうもない女」だった自分が許せなくなっている。

 まことは別に忘れてしまった記憶を取り戻したいとは思っていない。結果として「しょうもない女」としての自分を作り上げてしまった過去を、うっすら恨んでもいそうだ。

 だから、このドラマは記憶喪失という重いテーマを扱いながら、悲劇や奇跡の匂いが一切しない。ポジティブに見える。自己の再発見をマジメに描こうとしているというのは、そういうところです。