塩と紫蘇だけで梅干しの製造をおこなう「うめひかり」は、クラウドファンディングプロジェクト「無添加梅干しの継承!全国の梅産地に製造所をつくります!」を開始。3月29日(金)~6月1日(土)の期間、支援を受付中だ。

食品衛生法改正で危機に陥る手づくり梅干し

食品衛生法の改正によって、6月1日(土)から漬物製造業許可を取得するには原材料の洗浄設備(シンク)と器具等の洗浄設備をそれぞれ有するなどの新たな設備投資が必要となる(※)。

しかし、生活者の安全を守るうえで必要な改正である一方で、超高齢化が進む梅産業において、新たに製造所を整備するハードルは非常に高いと考えられる。

実際に、この改正により梅干しの製造販売を断念する農家も多く、これに伴い道の駅や産直に並ぶ手づくり梅干しの数も激減した。和歌山紀南の産直市場によると、昨年まで6名いた出品者が0名になるそうだ。

“梅ボーイズ”の決意


「うめひかり」の代表・山本将志郎氏は、和歌山県の梅農家に生まれた。



同氏は、若者が「面白い・やりがいがある」と思える農業を創り、梅干しを次世代につなぐと決意し、令和元年に梅本来の味を生かして、塩と紫蘇だけで漬ける梅干し屋を開業。全国から新規就農者を募り、「梅ボーイズ」として、10名の梅農家を誕生させた。今では2年で全国100を超える店舗で取り扱いがあるそうだ。


そんな「梅ボーイズ」にとっても、食品衛生法の改正に対応するための新たな設備投資は大きな試練に。銀行を回り融資を受け、2023年に製造所を新設したが、すべての農家が対応できるわけではないと実感したという。

そこで「梅ボーイズ」は、各地のプレイヤーと連携して小さな製造所を立ち上げ、地域で育てた梅を地域で受け継ぎ、日本の食文化「梅干し」を守ることを決めた。「すっぱい梅干しを次世代に繋ぐ。」というミッションのもと、これまで培ってきたノウハウや自分たちの経験を全国の産地に伝え、全国各地に梅干しの製造所をつくることによって、日本全体で「梅干し」を守り抜いていく。

愛知県と神奈川県から製造所整備を開始

今回のクラウドファンディングで集まった資金で、まずは愛知県と神奈川県から、漬物製造業許可を取得するために必要な要件を満たす製造所を整備。「梅ボーイズ」はこれまでのノウハウを共有し、無理なく小さい規模で梅干し製造を行えるようサポートを行う。



愛知県知多市の天然記念物にも指定されている希少な梅「佐布里梅」を活用した梅酒や梅シロップを造る澤田酒造では、酒蔵横の母屋台所が漬物専用の製造所として生まれ変わる。



また、皮が薄くて果肉が滑らかなのが特徴の「十郎梅」を生産する神奈川県小田原市の梅農家グループ、うめっちとも連携。今回は築100年のみかん熟成のための土蔵をリノベーションして、新基準に合った梅干しの加工場を整備する。