“創造主”が新たに生み出した殺人球菌『グレイトギフト』。その力を手にした白鳥は恐怖政治により藤巻らを従わせようとするが、郡司・本坊・神林(尾上松也)の“正義の謀反”により万事休すとなる。“創造主”は見立て通り、藤巻と久留米の同僚・奈良(小野花梨)だった。国立生命理工学研究所の人間として『ギフト』の実証実験を行う使命感と、『ギフト』の“真の創造主”である久留米へのライバル意識が同居する、白鳥でさえ扱いにくそうな本性の持ち主である。結局、『グレイトギフト』も久留米が作った特効薬には敵わず……。奈良の努力をあっさり上回る久留米の地力。心底、久留米が善人であってよかったと思うハイライトだった。
本作『グレイトギフト』は藤巻の成長ストーリーだったと言っても過言ではないだろう。うだつの上がらない窓際病理医だった藤巻は研究と妻の容態にしか興味がなく、決して命を司る正義とは言えなかった。自身が発見し培養した『ギフト』が悪用され、命が次々に奪われていく状況に狼狽(ろうばい)し、精神が崩壊しかけるなかで、久留米という“心の友”と支え合いながら打開策を見出した。回を重ねるごとに厚みを増した情熱が、“創造主”や白鳥の野望を打ち砕き、一度は悪に堕ちた神林たちの心を浄化したのだ。
己の欲望をぶつけ合うことで多くの命が消えた。ただ、いずれの人物も『ギフト』を手にするまでは悪ではなかったことは間違いない。“途方もない力”は人の心を静かに豹変させることは、本作品を通してあらためて認識した。それでも使命感をたぎらせ正義を貫いた藤巻と久留米には尊敬しかない。推理に比重を置いて視聴した分、彼らの心模様を汲み取りながらあらためて第1話から見てみたい。そう思わずにはいられないストーリーだった。