大学進学や就職、転勤などを機に、多くの人が一人暮らしを始めることになります。しかし、充分な初期費用を用意したつもりでも、いざ物件を決めて引っ越しをする段階で予想以上に費用がかさむもの。その後の生活の重荷になってしまうことも少なくありません。ここでは、余裕を持って新生活をスタートするために、引っ越しにかかる平均的な予算や見落としがちなコストを確認していきましょう。

礼金と仲介手数料は場合によっては値下げ交渉も可能

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まずは賃貸情報サイトなどで引っ越し先の物件を探していきます。あらためて説明するまでもないことですが、東京や大阪などの大都市に移住する場合、一等地と言われる地域の物件は賃料が非常に高く、よほど実家が裕福で支援を受けない限りは新大学生や新社会人が物件を借りることは難しいかと思われます。

ここでは、例として就職のタイミングで東京に引っ越すパターンをシミュレーションしてみましょう。

2019年度の大卒初任給の平均は21万200円。5月支給分以降の給料からは所得税に加えて社会保険料も引かれるため、手取り額は約16万7,000円になります。収入に対する理想的な家賃の比率は手取り額の3割というのがセオリーになっているので、理想は月5万円、多少妥協しても5万5,000円程度の物件を探したいところです。

折よく勤務先に直通する私鉄沿線に家賃5万5,000円、管理費なしの物件を見つけることができました。敷金・礼金はどちらも1ヵ月分。ここで注意したいのが、敷金・礼金なしで借りられる物件も数多く存在するということです。

また、礼金は交渉によって減額することやゼロにすることをお願いすることも可能です。国土交通省の「住宅市場動向調査」によれば、近年は約半数が「礼金なし物件」という結果になっています。

また、不動産屋に支払う仲介手数料は法律上の上限である賃料1ヵ月分+消費税、もしくは0.5ヵ月分+消費税というのが相場です。こちらも手数料が無料の物件が存在するほか、交渉による値引きの余地がある項目です。しかし、よい物件を一緒に探してくれるパートナーである不動産屋にとって仲介手数料は貴重な収入源。「無理なお願い」は禁物だということは理解しておきましょう。

火災保険、鍵交換、保証会社などの費用について

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無事交渉が成立し、敷金1ヵ月分、礼金なし、仲介手数料1ヵ月分という契約内容で借りられることに。また入居は月の半分が過ぎた日ということになりました。この時点で、敷金、仲介手数料+消費税、翌月分の前払いの家賃、入居月の残り半分の日割り家賃を合算した約3.5ヵ月分の費用が必要になります。5万5,000円の物件の場合、およそ19万8,000円です。

【入居費用の概算】
5万5,000円×3.5ヵ月分=19万2,500円
仲介手数料の消費税:5,500円
19万2,500円+5,500円=19万8,000円

しかし、契約にかかるお金はこれだけではありません。まずは2年分の火災保険料。保険会社によって違いはありますが、東京都内の場合1万5,000円前後が相場です。また多くの物件で鍵交換の費用が必要になります。鍵の構造によって異なりますが、これも1万5,000円前後の出費を想定しておきましょう。

加えて近年は、保証人ではなく保証会社の利用が必須条件となっている物件がほとんどです。初年度は家賃1ヵ月分の半分程度が相場となっているので、5万5,000円の場合は2万7,500円がさらに追加されます。

【その他に必要な費用の概算】
火災保険料:1万5,000円
鍵交換費用:1万5,000円
保証会社加入料:2万7,500円
合計:5万7,500円

19万8,000円に火災保険料、鍵交換費用、保証会社の加入料を加えると、25万5,500円。あくまでも概算ですが、礼金なしの場合でも賃貸契約にはこれだけの費用がかかるのです。

さまざまな工夫と周囲の協力で引っ越し費用を抑える!

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引っ越しにかかる出費は賃貸契約だけではありません。荷物を運搬するために引っ越し業者を利用すれば、その分の費用がかかります。東京から200~500キロメートルほどの距離にある地域から単身者が引っ越しをするケースでは、荷物の量にもよりますが通常期でも5~8万円程度が相場になります。また3~4月といった繁忙期は、通常の倍ほどの料金になっていることもあるため注意が必要です。

なんとか荷物の量を調整して安い引っ越し業者を見つけましたが、5万円の費用がかかりました。この時点で、出費の総額は30万円を超えています。

もし引っ越し業者に支払うお金を少しでも減らしたいのであれば、レンタカーを借りる、家族や友人に車を出してもらう、宅配サービスを兼用するなどさまざまな工夫をしてみましょう。場合によっては、半額以下の出費で荷物を運ぶことができるかもしれません。