「この俳優に見つめられるとしたら?」とよく考えてしまうのが、阿部寛だ。

 あの目力。あの日本人離れした顔の強さ。強靭な俳優像。なのに心地よい優しさと温かみをでもって包みこんでくれる(そんな気がする)。

「イケメンと映画」をこよなく愛する筆者・加賀谷健が、気になる出演作から、阿部寛の不思議な眼差しに迫る。

◆阿部寛に抱く安心感

『テルマエ・ロマエ』Blu-ray通常盤(東宝)
『テルマエ・ロマエ』Blu-ray通常盤(東宝)
 絶対安心安全。阿部寛の存在は揺らがない。まるで仁王像のように直立不動でそこにいる。眼光鋭くホリの深い顔立ちは、古代日本の絵図に描かれたペルシア人の厳しさを思わせる。『テルマエ・ロマエ』(2012年)でローマ人を演じてあれだけのリアリティなのだから。

 例えば、今年の大河ドラマ『どうする家康』(NHK)で演じた武田信玄役はどうだったろう。

 座っているときも立ち上がっているときもドシッと構えた独特の風情がある。とにかく立派に見える。これぞ戦国武将の威厳なんだと納得させられる。そして、なぜか妙な心地よさも感じる。

 阿部寛側からは、周りがどう見えているのだろう。あれだけの体格と長身ならさぞや壮観だろう。それこそ戦国大名が天守から城下を見下ろすような。

 見下されたこちらは思わずドキッとして身構える。でも、同時にああこの人には絶対的に守られているんだよなという安心感を得られるのが不思議。