奈良県明日香村のキトラ古墳周辺は、国営飛鳥歴史公園として整備されています。景色の良い休憩所もあり、田園風景を眺めながらハイキングを楽しむ人も多いです。古墳の壁画を展示する施設やおしゃれなカフェもあるので、歩いてみませんか。

明日香村のキトラ古墳とは

整備されたキトラ古墳

キトラ古墳は、奈良県明日香村(あすかむら)の阿部山にある古墳です。7世紀末から8世紀初頭に築かれたと考えられている円墳で、構造は、上段と下段からなる二段築成となっています。

墳丘の中央には、石室があり、昭和58年の調査では、極彩色の壁画が発見されました。石室には、豪華な装飾を施した木簡、金や銀を使った副葬品があったことから、身分の高い人のお墓であったと考えられています。

2000年には、国指定史跡に、その後特別史跡にも指定されたキトラ古墳周辺は、国営飛鳥歴史公園として整備されており、ハイキングや散策を楽しむのに適しています。

「国営飛鳥歴史公園 キトラ周辺地区」へ歩こう

道の駅もある近鉄飛鳥駅前から出発

近鉄吉野線の飛鳥駅。駅前が道の駅となっており、村内へのバスも発着する。

キトラ古墳まで歩いてみましょう。電車でお越しの方は、近鉄吉野線の飛鳥駅(あすかえき)から出発すると良いでしょう。駅前が「道の駅 飛鳥」となっており、車で来られた方も、こちらの駐車場を利用できます。道の駅には、農産物直売所「あすか夢販売所」や観光案内所、レンタサイクルがあります。

おにぎりを販売するお店なども、駅前にあります。飛鳥駅を出ると、飲食店は少し離れた場所にしかありません。お昼までに戻られない方は、食べ物を買っておくと良いかもしれません。あすか夢販売所にも、少しですが、柿の葉寿司、弁当などが販売されていることがあります。

キトラ古墳方向へ

交差点を渡り、「あすか夢販売所」の前を東に30メートルほど進むと、細い遊歩道が右手に見えます。こちらに入り、ずっと南へ歩きます。遊歩道は集落の中を進むので、やや順路が分かりにくいかもしれません。その場合は、東側を通っている県道を歩くと良いでしょう。

檜隈寺跡前休憩案内所

しばらく歩くと、小高い丘に建物が建っているのが見えてきます。こちらは、国営飛鳥歴史公園 キトラ周辺地区に整備された休憩・案内施設です。施設の西側には、駐車場もあります。

建物は、内装、外装とも木材が多く使われており、温かみがあります。飲料の自動販売機やテーブルもあり、ハイキングやサイクリングの際に、休憩するのに適しています。飛鳥エリアの観光情報を得ることもできますよ。

高台にある施設からの眺めは、素晴らしいです。小高い山のすそに、田畑が広がり、民家が点在しています。日本の原風景のような、のどかな風景を眺めると、すがすがしい気分になれるでしょう。

建物の外に出ると、さらに広々とした景色が楽しめます。北側には、お隣の橿原市の市街地も眺められます。屋外にも小さなベンチが設置されているので、気候の良い時期などは、こちらでお弁当を食べたりして過ごすのも良いでしょう。

こちらは南東側の眺望です。ゆるやかな斜面に、田畑が並んでいます。休憩所の少し下には、復元された古代住居が見えています。

於美阿志神社・檜隈寺跡

休憩所から少し南に進むと、於美阿志神社(おみあしじんじゃ)が建っています。祭神として、応神天皇のときの渡来人の阿智使主(あちのおみ)が祀られています。

この場所には、古くは檜隈寺(ひのくまでら)という寺院が建っていました。このお寺は、応神天皇の時代に渡来した、東漢氏(やまとのあやうじ)の氏寺であったとされています。発掘調査によると、金堂や講堂、塔や回廊が存在していたことが分かっています。

神社の境内には、寺院の建築物の礎石や、塔の跡に建てられた十三重石塔が残っています。十三重石塔は、平安時代に造られたとされており、重要文化財に指定されています。

丘の上に立つ神社は、濃い緑の木々に囲まれています。御神木のような大きな樹木もあり、昔から大事に守られてきた場所であることを感じさせます。

五穀の畑・キトラの田んぼ

さらに南へ向けて、遊歩道を進んでいきましょう。このあたりは、「五穀の畑」、「キトラの田んぼ」といった、田畑が整備されているエリアです。地元の農家の協力で、各種農体験も行っているそうです。

右の方をを見ますと、こちらにも古代の住居を復元したものが見られます。現代の家屋と比べると、とても簡素ですが、田畑のある景観に溶け込んでいますね。

案山子(かかし)も展示されています。農作業をしている人や、ちょっとかわいらしいものもあるので、見てみてください。

遊歩道はさらに南へ続きます。筆者が歩いた際には、子どもと散策を楽しむ方や、犬の散歩をしている方を見かけました。国営公園として整備されていますが、短いリードで繋ぐなどのマナーを守れば、犬の散歩も可能だそうです。

四神の広場

五穀の畑から5分ほど歩くと、四神(しじん)の広場に到着です。こちらは、国営飛鳥歴史公園のキトラ周辺地区で、最も大きな芝生広場となっています。子どもを遊ばせたり、お弁当を食べる人の姿も見られます。筆者もこちらで、駅前で買ったおにぎりをいただきました。

道路を挟んだ東側には、展望台があります。筆者が訪れた際は、残念ながら工事中で立ち入れませんでしたが、こちらからの眺望はかなり良さそうです。

広場の端には、キトラ古墳壁画体験館・別館があります。別館には、休憩所や売店を備えています。コーヒ、焼き菓子などの軽食のほか、ちょっとしたお土産物も購入できます。

キトラ古墳壁画体験館 四神の館

キトラ古墳壁画体験館 四神の館は、映像や模型、展示により、キトラ古墳や古代の飛鳥について学ぶことができる施設です。入場は無料ですので、気軽に入ってみましょう。

キトラ古墳について知ることができる四神の館。天井には天体図がある。

地階には、キトラ古墳の原寸大模型があります。こちらの模型は精巧に作られており、石室内部に描かれた壁画も見られます。壁画には、四神、十二支、天文図、日月が描かれています。

四神とは、天の四方をつかさどる神獣で、こちらの壁画にも、東の青龍、南の朱雀、西の白虎、北の玄武が見られます。石室内は少々暗いですが、ガイドの方がいらっしゃるときは、説明もしてくれますよ。

階段を上がった1階では、石室から取り出した実物のキトラ古墳壁画を見ることができます。こちらは、事前登録制の期間限定公開となっています。興味のある方は、キトラ古墳壁画保存管理施設のサイトをご覧ください。

キトラ古墳

キトラ古墳を外から眺めてみましょう。四神の館・地下通路を通ると、道路を渡らずに古墳側に向かうことができます。案内に従って丘の方に登ると到着です。

こちらがキトラ古墳です。丸い上段と、やや大きな下段からなる円墳であるのが、お分かりいただけるでしょう。この時代の古墳は、それより前の時代のものよりも小型化しており、意外と小さく見えます。上段の直径が9.4m、下段が13.8mで、高さは上段、下段合わせて約4m程度だそうです。

古墳の周囲は、古墳鑑賞広場として整備されています。すぐそばで見るより、少し離れた方が、古墳の全体像が分かりやすいかもしれませんね。

散策を終え、出発地に

キトラ古墳周辺の散策、お疲れさまでした。駅や駐車場に戻り、帰路につきましょう。こちらから、飛鳥駅の一つ南の壺阪山(つぼさかやま)駅までは、徒歩約15分です。飛鳥駅へ戻る方は、徒歩約25分から30分ほどとなります。お時間のある方は、引き続き明日香村の観光を楽しんでください。