日本百貨店協会の免税売上・来店動向によれば、2020年9月の百貨店免税売上は21億2,000万円、前年より91.6%減でした。約230億円が失われた計算です。この主力はインバウンド旅行消費全体の36.8%(2019年)を占める中国人でしょう。以下、その失われた中国人富裕層の消費について、紹介したいと思います。

星付きレストランの予約も独自ルートで確保できる?

筆者は2016年以降、中国人の妻と日本で暮らしています。コロナ前までは、妻の一族や友人が定期的に遊びに来ていました。その中に某富豪夫人がいました。2019年3月のことです。夫人から筆者へ、「京都のミシュラン星付きレストランを予約してほしい」と連絡がありました。桜の季節、それも3週間前だったので、予想通り満席でした。しかしその後、夫人は中国から手をまわし、普通の日本人では取れない予約を確保します。おそらく、クレジットカードのVIPサービスを利用したのでしょう。

一度の旅行で300万円の爆買い

そして2019年4月中旬、妻と富豪夫人、もう1人の友人と女性3人で2泊3日の京都旅行へ出かけました。しかし、ほとんどの時間、京都大丸と高島屋へ入り浸っていたようです。彼女らの帰宅後、富豪夫人のレシートをのぞき見する機会がありました。ミキモトパール、グッチ、エルメスなど、数十万のレシートの束でした。妻の話では「300万円以上使った」とのことです。

中国では2019年1月「電子商務法」が施行され、関税の徴収が強化されています。これを富豪夫人に問うと「なあに、航空会社は抑えてある。」という返事です。航空会社と税関は違う気がするのですが、富豪には同じなのかも知れません。

同年11月、紅葉真っ盛りの京都で、この3人は全く同じことを繰り返しました。富豪夫人は年間600万円以上、高級品消費に貢献しました。こうした上客が、現在ほとんどゼロのワケですから、百貨店の売上げが戻るはずはありません。